「Denは私が東京で一番好きなレストラン。絶対に行くべきだよ」
これは随分前、友人の家でフライドポテトとハンバーガーを食べながら、頭に刻み込んだ一言だ。
傳の主厨・長谷川在佑氏は東京出身。高校卒業後すぐに料理の道に入った。2007年、29歳で独立し、わずか三年でミシュラン二つ星を獲得。2018年にはすでにAsia’s 50 BestでNo.2、The World’s 50 BestでNo.17にランクインしていた。

しかし、こうした頂点を極めた栄誉と対照的なのが、彼の料理に宿る精神だ。
傳の板前で、より大切な記憶点となるのは、体温を感じさせるような気配りだ。温かく、きめ細やかで、行き届いたもてなし。ほとんど厭わずに一皿ずつ丁寧に説明し、板前の客同士が言葉を交わすことも促す。まるで友人のキッチンのそばに座っているような、特別な家宴のようだ。



「何を飲みますか?お酒がよければ、白ワインとシャンパン、それに日本酒がありますよ」店にドリンクリストはないが、飲み物が乏しいわけではなく、むしろかなり行き届いた準備がされている。
夕食は、もてなしの幕開けとして最中から始まる。丁重さと親しみが同居している。
この季節の中身は乾燥金柑と大根。フォアグラが忍ばせてあり、軽やかな乳のような香りを放つ。金柑の風味は凝縮され、前面に明るく立ち上がり、そこから大根が飛び出してきて、全体の味わいをより清々しい方向へとそっと導いていく。



伝統的な和食の「卵料理」の部分は、最近は温泉卵と出汁で表現され、四月らしさを感じさせる白アスパラガスのケーキが添えられる。いくつものねっとりとした濃厚さが絡み合い、口当たりは優しく、出汁の旨みがゆっくりと沈んでくる。白アスパラガスは、この季節ならではの植物の新鮮な甘みを引き出している。
傳タッキーは店自慢の看板「DFC」フライドチキン。箱にはシェフ自身がカーネル・サンダースに扮した写真がプリントされている。今季の中身は春にほぼ避けて通れないフキとシラウオ。フライドチキンそのものの楽しさに、大人びた旨みとほのかな苦みが加わる。
フライドチキンの箱を裏返すと、長谷川主厨が最近気に入っているレストランが書かれていて、しかもリアルタイムで更新される——まるでDenだけの小さなレストランランキングのようだ。


「次は石鯛です。日本酒でも飲みますか?」
二週間熟成させた石鯛は厚切りで、食感はすでに粘りのある柔らかさに近づいている。昆布ソースが、身に溶け込んだ魚の味を再び引き出す。旨みは鋭さではなく、ゆっくりと絡みつくような形で舌の上に広がり、静かでありながら力強い。


「鱒は軽く燻製にしてあります。このイタリアの白を試してみますか?」何を飲むかは客が悩む必要が一切なく、すべて明快に整えられている。
皮はパリッと、身はふっくら脂がのり、食べていて実に純粋だ。
塩気は上にのせた葉物野菜の中に隠れている。芽キャベツは無造作に焼かれているように見えて、柔らかくすべき部分とサクッとすべき部分がはっきりと分かれている。一皿の中に、食感も春の気配もぎっしりと詰まっている。

見事としか言いようのないサラダ。
野菜の種類は菜園に足を踏み入れたかのように豊富で、調味の仕方も何度も手を止めて確かめたくなるほど多彩。漬けた人参の清々しさ、出汁の旨みを含んだスナップエンドウ、トマトの甘酸っぱさ、さつまいもの繊細さ、ごぼうの甘み。緑の野菜たちもそれぞれ自分の味を持ち、和えられて初めて成り立つのではなく、一粒一粒がしっかりと自立している。最後にすべてをそっとまとめ上げているのは、上にほんの少し振られた梅干し菜のような調味だ。
実に素朴でありながら、決して単純ではない。
人参の星形の切れ込みが、また食べたいという私の気持ちを代弁してくれた。



春の気配十分な筍の釜飯。鴨油が米粒をつやつやに包み込みながらも、口に入れれば一粒一粒がしっかり立っている。香りは温潤で重厚な方向へ進み、筍の歯切れの良さをより際立たせている。
「おこげ、一口食べますか?少し取り分けますね」
より硬く、より香ばしいその一口に、胡椒をぱらりと振りかけると、味わいが一気に引き締まり、満足感もより直接的になる。



デザートでは、酒蔵がDenのために特別に仕込んだ酒が登場。ラベルは一筆書きのPucciと長谷川主厨のツーショット。Pucciくんもようやく眠りから覚めて皆に挨拶しに現れ、あちこちから「かわいい😍!!!」の声が上がる。
「これがこの日のレストランで一番賑やかな瞬間なんです〜」
この食事を終えて、なぜ友人たちが以前からずっと「一番好きなレストラン」に挙げていたのか、本当に理解できた。
「高価であること」で価値を証明するのではなく、それでいて一皿一皿が丁寧で、美味しく、季節感がはっきりしている。ホールとキッチン双方の熱意は派手さがなく、訓練された専門性と家族のようなもてなしの感覚が、ちょうどよいバランスで共存している。
壁いっぱいのメッセージとサインに囲まれていると、レストランというよりも「好き」で満たされた空間そのものに感じられる——主厨自身のこの仕事への愛情、友人たちからの称賛、そして客が去り際に持ち帰る、記憶に残る幸福感。
長谷川氏は「和食」を、世界中どこの客にとっても理解しやすい言語として表現している。食材、文化、味の型が、無理なく人を招き入れ、食べるほどに層を増していく。まず喜びを与え、そこから少しずつ記憶に残るポイントを積み重ねていく。そして再訪への好奇心を掻き立てる——「次はどんな雰囲気だろう?次は何を食べられるだろう?」と、探求し続けたくなる。それこそがDenの魔力なのだろう。
For real. Have fun.
傳(伝 でん)
Monday – Saturday
6:00 PM -11:30 PM
www.restaurant-den.com
Chef’s Menu ¥36,000(飲み物込み)

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