秋田を二度目に訪れた際、ようやく予定に組み込めたのがこのイタリアン、🇮🇹Pasticciだ。秋田の地元では伝説的でありながら気取らない店として語られ、地元の目利きたちから繰り返し勧められている一軒。
🧑🍳主厨の武田氏は秋田出身。15歳で料理の道に入り、かつては東京・白金台のイタリアンで修業した経験も持つ。人生の紆余曲折を経て、最終的に秋田市に戻りこの店を開いた。仕込みから調理まですべて一人でこなし、カウンター7席も満席にこだわらない、力の抜けた経営スタイルだ。
こんな一見気ままな、主厨自身が自分のワイングラスの底をいつも拭っているような店で、これまで訪れたすべての和伊料理店の中で堂々一位に挙げられるほどの主菜に出会うとは思わなかった。
🐂宮城牛の赤身に、いちごソースを添えて。
肉感は十分にありながら、繊維は驚くほど細やか。表面には十分な焦げ香があり、オリーブオイルがほんの少し軽くまとわり、植物性の清々しい香りを引き立てている。清らかで繊細な肉の旨みが、噛むほどに幾重にも開いていく。いちごソースの組み合わせは型破りだが、ここではむしろ理にかなって感じられる。ちょうどいい塩梅の清涼感が、この赤身の気質にぴたりと合っている。
この一皿は和牛にありがちな脂の主張を見事に隠しており、後に残る記憶はただ宮城牛赤身の繊細で清らかな香りだけだ。
もちろん、他の料理にも工夫が凝らされている。
🍈メロンと熟成クリームチーズは、率直な組み合わせながら満足感もストレートに届き、濃厚さと豊かさ、清々しさも十分。
🥓形の異なる「油条」風のフリットにフランス産生ハムを添え、あえて一番脂の少ない部位を選んでちょうどいい塩気と食感を表現。
🐟カルパッチョは一皿で四種類もの組み合わせを見せる。甘えびは雄のみ、シマアジには唐辛子、真鯛にはからすみ、キジハタには黄からしを合わせ、一口ごとに個性が異なる。
🐑ラム腸にはヤギチーズのボールを添え、驚いたことに中には筍が忍ばせてあり、一気にはっきりとした和の季節感が加わる。
🦐富山の白えびを使ったパスタや、揚げた穴子とイカ墨ご飯も。和食材の鮮度と伝統的なイタリアンの主食が並ぶと、個性がありながらも直接的な美味しさになる。
最後、プディングで満たされて体を揺らしていた頃には、武田氏はすでに椅子と自分のグラスを持ち出し、板内に腰掛けて休んでいた。
「これほどの腕前で、なぜ当時東京に残らなかったのですか」
「あの頃、貯金を競馬につぎ込んで、勝ったら東京に残って店を出そうと決めていたんです。それで戻ってきました」
⭐️
本当に、店主一家も料理も一見気ままに見えて、料理自体はしっかり美味しい店だ。
武田氏は料理中も隠すことなく味見を繰り返し、手を加え続ける。レモンを少し足したり、部位を変えたり、その日買ったばかりの野菜を加えたり。何気なくやっているようで、「あるものを使う」というランダムさすら感じさせるが、最終的に出てくる組み合わせは、いつも舌先の満足感を正確に突いてくる。
メニューは毎月がらりと変わるらしく、次の訪問がすでに楽しみだ。
💰 ¥15,000
🇮🇹 Pasticci パスティッチ










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