面白いことに、Tabelogで富山県第1位にランクインしている料理店は、なんと農家レストランだ。

もちろんそれだけでなく——Tabelog🏅金賞店、ミシュラン二つ星、Asia’s 50 Bestで69位、そして下の写真にも写っている数々の受賞歴を誇る店でもある。
レヴォ——L’ évo

金沢、富山、高山を結んで三角形を描くと、L’ évoはちょうどその中心に位置する。鉄道もなく、バスかタクシーでしか辿り着けない、山深い森の中にぽつんと建つ店だ。
それでも世界中の食通たちから、北陸で必ず訪れるべきレストランとして名前が挙がる。
レストランの公式サイトにはこんな一文が書かれている——
わざわざ脚を運んでいただくだけの価値をご実感ください。Once you arrive you will realize that the journey was worth it.


レストランというより、山野に隠れた食の探求基地兼、富山の現代工芸品ミュージアムのような場所だ。
レストランで使う食材も器も、すべて富山の地元産(詳しくは記事の最後で)。
シェフの谷口英司氏は大阪出身。高校卒業後、アルバイト先のホテルで料理の楽しさに目覚めたという。日本国内とフランスでの修行を経て、2014年に独立してL’ évoを開業。2020年に現在の利賀村へと移転した。
地元の料理学校出身ではない、いわば「よそ者」のシェフだからこそ、店で使う「富山の産物」はすべて谷口シェフが一つひとつ自ら探り当ててきたものだ。


アクセスの心配は無用。レストラン側でタクシーの手配もしてくれる。富山からは約1時間20分、高山や金沢からもほぼ同じくらいの距離だ。
ここでひとつTips。ルートは高速道路より国道がおすすめ。所要時間はほぼ同じで、道のうねり具合も変わらないが、5,000円ほど安く済み、何より景色が美しい。


農家レストランだけあって、メニューは当然季節ごとに変わる。
着席してまずはメープルサワーを一杯。外の葉はまだ緑色だったが、10月ともなれば秋のテーマに舵を切っても何ら問題はない。





ウェルカムスナックの5品は、富山県の食材と田舎らしさに満ちていた。
富山産白エビを使った小さなタルトは、みずみずしく甘くて、ちょっとした遊び心を感じさせる。
地元産のヤギ乳チーズ(後で分かったのだが国際金賞受賞の工房のもので、チーズに使う塩は富山湾の深層水から精製されているという)に酒粕を合わせた一皿は、旨みと塩気のバランスが見事だった。
さらに赤ビーツと鶏レバームースで作ったマカロンは、土の香りをうまく隠しつつ、甘さと繊細さの組み合わせで一口ごとに幸せな気分にさせてくれた。


アナゴ

米粉パン
コースの正式なスタートは富山湾のアナゴ。旨みは感じるのに、魚の姿はどこにも見当たらない。
実はここのアナゴは、すべて出汁を取ってジュレにするために使われているのだという。下に隠れたウニが甘みを引き出し、ポテトピュレが繊細なクリーミーさを添える。爽やかな酸味と紫蘇の清々しさが重なり、コースの幕開けから鮮烈な透明感を放っていた。

タチウオ
富山湾のタチウオを炭火で炙る。どうしてこんなに香ばしいのか。
ズッキーニ、キュウリ、米菓子と合わせた、構成としてはよくある組み合わせだが、地元食材の新鮮さと質感によって、旨みと塩気、香ばしさが際立ち、一口で幸せな気分になる。
L’ évoで使うシーフードの多くは、地元で4代続く鮮魚店、黒崎屋のもの。日本で初めてオンラインでの魚選びを実現した鮮魚店で、来店しなくてもその日にアップロードされた写真から好みの獲物を選ぶことができる。この取り組みで水産庁長官賞も受賞しているという。


ツキノワグマ
ツキノワグマはL’ évoの夏〜秋のメニューでよく使われる食材で、見た目はポケモンのリングマを思い浮かべてもらえればイメージしやすい。
この時季のツキノワグマは1ヶ月熟成させたものを炭火で焼き上げており、十分な燻香とジビエらしさが結びつき、野生のツルムラサキも添えられた、まさに田舎らしい酒の肴だった。
内に秘めたるクマ、と呼びたい一皿。噛み切りにくいものの、噛むほどにどんどん香りが立ち上ってくる。


ホタルイカ
温菜のパートは海の幸から始まる。
旬のホタルイカを炭火で焼き上げ、田舎の小さな店ならではの野性味と自由さを見せつける。笹の葉と貝で取った出汁が、清々しさと旨みを一気に結びつけていた。

スッポン
近くの小川で獲れたスッポンを、焼き鳥のような形に仕立てている。
ゴマの葉で包み、トウモロコシとトマトのサルサを合わせて。
どことなく海鮮版シャワルマのような感覚だろうか?
肉料理らしい満足感がありながら、十分な清涼感も兼ね備えている。


大門素麺
がっつりとした肉料理の後には、天にも昇るような小さな麺が一皿。
香りはヤギ乳チーズそのものなのに、食べると複雑な香りが口いっぱいに広がる。
富山県産の野草茶、ふきのとう茶と、ヤギ乳チーズのスープを合わせており、塩気と旨みが濃厚で香り高いのに、どこか温かく胃に優しい味わいだった。


L’ évo チキン
メインは開業以来の定番料理から。ご飯と内臓を包んだ小さな鶏もも肉が、皿の縁にちょこんと立っている。
見た目は至って普通だが、噛みついた瞬間、パリッとした皮、じゅわっと溢れ出す熱々の肉汁、そして口いっぱいに広がる鶏の脂の香りに出会う。炭火の効果で、柔らかさと脂の旨みがより一層引き立っていた。
山でオーガニック飼料を食べて放し飼いにされて育ったという伝説のL’ évoチキンは、確かにしなやかでジューシーだった。


アマダイ


仔猪
日本で食べる洋食体験において、メインの肉や魚が期待外れに終わることは、もはや珍しくない。過去に何度か大惨事を経験してきた身としては、L’ évoのメインはまずまずの出来だったと言える。
表現するなら、際立って美味しいわけでもなく、失敗でもなく、ただちょっと理解が追いつかない、という感じ。
アマダイに海老の糠と海老の卵を合わせた、上質な揚げ魚といった趣だったが、皮の鮮度と硬さがやや強めだった。
可愛らしい小さなイノシシは1週間熟成させたのち炭火で焼き上げ、柔らかさは抜群だったが、噛んでいくと味が薄く感じられた。

ペポカボチャ(小玉スイカ)

クロモジ
全体を通して見ると、都市部のレストランにありがちな、シェフの理念を強く押し出そうとする執着感とは違う。L’ évoはより柔らかく、「富山の自然からの贈り物」に目を向けている。どの料理も、主役の食材と味付けに、その土地ならではの個性が宿っている。
調理面では特別な技巧を見せているようには見えないが、炭火焼きだけでも、厨房の実力を十分に試す仕事だ。


ペアリングは全部は撮っていない
ペアリングも一部利用した。世界的に見れば富山ワインの生産量はごくわずかだが、それでもレストランは料理との相性の高いワインをしっかりと選び出していた。この点はまったく手を抜いていないと言える。
この一食は強い印象を残す一食だった。
これは日本の富山県、L’ évoでしか味わえない味だ。


後になってレストランの公式サイトを見ると、すべての生産者を紹介する専用ページがあった。簡単にまとめると、L’ évoが使っているのは——
富山の裏山、白鳥湖を持つ農場で作られた大根と白菜。
富山の里山にあるオーガニック農場の野菜と、平飼いの鶏。
ドイツで受賞歴のある富山の牧場が専門供給する牛肉。
4代続く富山の鮮魚店から届く魚。
富山県内でも名高い、国際金賞受賞のヤギ乳チーズ工房。
富山・立山連峰にある苗床農園から届く植物。
そして富山地元の自然派ワイン、SAYS FARM。
さらに——
富山の著名な仏像彫刻家の後継者による木彫り。
日本有数の鋳物の町、富山県高岡から届く銅器。
富山の現代越中瀬戸焼を代表する作家の作品。
富山出身の天才ガラス作家、TAIZO GLASSによる酒器。
複数の富山の陶芸家が手がけた食器の数々……。
テーブルクロスに至るまで、富山の地元ブランドとのコラボレーションだ。

いやはや、大阪出身の谷口さん、いったいどれだけ富山への愛が深いのだろうか〜

レヴォ——L’ évo
富山県南砺市利賀村大勘場田島100
木曜〜火曜
ランチ 12:00/12:30
ディナー 18:00/19:00
https://levo.toyama.jp/
30,000円〜39,999円

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