• 割烹 新多久|小さな町で出会う大きな世界

    大都市の予約の取りづらさや物価の高さに比べると、日本の田舎は食いしん坊にとって間違いなくもっと魅力的だ。

    新潟旅の最初の目的地は、村上への「遠征」(実際には電車で30分ほど)。旧越後国最北の城下町として栄えたこの古い町には、歴史的な城跡や武家屋敷、有名な瀬波温泉に加えて、150年の歴史を持つ老舗、割烹 新多久がある。

    店は1867年に創業し、2006年の火災の後に再建された。今の店構えは、現代的な雰囲気と庭園の美しさを兼ね備えている。

    現在は五代目を継ぐ山貝真介・山貝亮太の兄弟が営んでいる。兄が板前で料理を担当し、弟は厨房で味付けと煮込みを担当する。

    食材の90%以上が村上の地元産。山と海に挟まれたこの街は食材の宝庫と言っていい。海鮮、野菜から日本酒、米、調味料まで質が高く、地元の牛肉と岩船産の米は日本全国でもトップクラスだ。

    兄弟二人は地元文化を発信することにもこだわりを持っている。「せっかく遠くから村上まで来てもらうのだから、村上の食材の魅力をしっかり感じてほしい」と語る。

    当日のカウンターは6席で、ちょうど貸切状態になった。一番高いコースを選んでもわずか22,000円。店側は親切にも英語メニューまで用意してくれていた(内容の2割ほどはズレていたけれど)。おもてなしには十分な心遣いと温かさがあった。

    抹茶豆腐

    ちょうど新茶の季節で、最初の一品は武家風の小さな椀に盛られた抹茶豆腐だった。

    食感は意外にも搗きたての餅のようで、もちもちと粘りがあり、なめらかで繊細。柔らかな茶の風味が口の中でゆっくりと広がり、ほのかな塩気が旨みを引き立て、余韻にはほんの少し上品な苦みが残る。

    P.S. 村上は日本の商業的茶生産地として最北端に位置し、「北限の茶処」の異名を持つ。遠征のついでに、地元の茶舗を覗いてみるのもおすすめだ。

    ヒラメ 煮こごり

    一般的な料亭の刺身の出し方とは異なり、新多久のヒラメは二部構成になっていた。まず煮こごりを食べ、旨みが口に残っているうちに急いで刺身をひと口。前者は凝縮された旨みを、後者はたたいて軽く炙ることで、身そのもののコリッとした弾力を見せていた。

    兄の山貝真介さんが語っていたように、「刺身が美味しい」というより「この魚が美味しい」と言うべきで、食材を一つの全体として表現している。

    牡丹海老 鹿尾菜 柚子

    運ばれてきた瞬間、「見てないで早く食べて」と急かされた。

    海老真丈は見た目こそ地味だが、中には丸ごと一尾の牡丹海老がほぼ生の状態で包まれている。火の通ったすり身は濃厚で香ばしく、生の海老は甘くシャキッとしていながらもちもちしていて、二つの食感が混ざり合い、味わいは豊かなのに口当たりは軽やか。香り高く滑らかで、後を引く一品だった。

    桜鱒

    桜鱒はまさに旬。村上市の三面川産は特に有名だ(興味のある人は、新潟の水族館で関連の展示を見ることもできる)。

    焼き方も興味深い。まず魚の身をアルミホイルで包み、昆布出汁で表皮をさっと湯通ししたあと、素早く炭火にかけて皮の弾力と張りを取り戻す。

    皮は薄いながらもコラーゲンをたっぷり含み、噛むとしなやかで弾力がある。脂の乗ったふっくらとした身とのゆるみと張りの対比が絶妙だった。

    豆 青筍

    のどぐろ 山芋のすりおろし

    地元の甘い豆を使った箸休め。異なる形に調理された豆が、清らかな甘みの中に植物本来の香りを際立たせていた。

    のどぐろは、猛火で炙って香ばしく黒く焼き上げた皮の魅力が光り、そのコントラストが粉紅色の身と美しく対比する。しかし本当に驚かされたのは、皿にのった山芋だった。酸化した酸味は一切なく、ただただシャキッと爽やかな食感。この小さな町の植物たちは、いつも格別に輝いている。

    海藻

    穴子飯

    写真ではこの穴子の本当の大きさは伝わりにくい。真介さんがカウンターで手振りを交えて教えてくれたところによると、およそ1メートルもあり、この時季の村上を代表する食材のひとつだという。

    鰻の皮は薄くしつこさがなく、身は脂が乗ってふっくら。店が用意した熟成酒と合わせると、元は鮮烈だった鰻の風味が、温かく穏やかな旨みへと変化していった。

    猪 きゅうり

    アスパラガスの茶碗蒸し

    弟の亮太さんは数年前に狩猟免許を取得しており、そのためメニューにはその季節らしいジビエが時折登場する。今回は前日に仕留めたばかりの猪肉で、小さなきゅうりと柿の種を添えて。風味はやや物足りなかったが、なかなか新鮮な体験で、肉料理としての箸休めのような位置づけだった。

    続いて意外にも運ばれてきたのは緑の一椀、アスパラガスのピューレを使った茶碗蒸しだった。西洋風のポタージュの技法を取り入れたかのようで、繊維感のないきめ細かな質感、アスパラガスの爽やかな香りがいっぱいに広がり、なめらかな中に春の気配を感じさせた。

    赤斑石斑魚の炙り

    タコと山椒水

    椀の中の赤と白は、実は同じ一匹のタコから取られたもので、部位ごとの食感の違いをはっきりと表現するとともに、村上近海で獲れた活きダコの食材としての強さも見せてくれた。

    白い部分はタコの胴体を細く切ったもので、多少歯応えがありながらも軽い歯切れの良さがある。赤い部分は足で、よりみずみずしくパリッとした食感がはっきりしている。小さな一椀を食べ終えても、まだ物足りなさが残るほどだった。

    山菜豆腐餅、茄子、猪肉、いんげん

    新多久は村上地域の海産物の良さを際立たせるだけでなく、野菜料理への丁寧さも同じくらい行き届いている。

    山菜と豆腐で作った小さな餅は、村上の「ういきょう餅」を思わせる仕上がりで、山野菜の香りを存分に引き出していて、食べれば食べるほどやみつきになる。焼き茄子は柔らかく味がよく染みていて、炭の香ばしさが濃厚。いんげんはシャキッと甘く爽やかで、ひと口ごとに新鮮さが詰まっていた。

    唯一少し惜しかったのは、添えられた猪肉で、獣臭がやや強く、この一食の中で唯一の失敗作になってしまった。

    間八寿司

    主食の前半は間八の押し寿司。北陸地方の押し寿司の形と、村上地元の飯寿司(いずし)の発酵の風味を組み合わせていて、形式面での取り入れが見て取れると同時に、村上ならではの味わいも感じられる。

    新多久では、飯寿司でよく使われる干し鮭を、新鮮な間八に置き換えている。発酵による酸味とほのかな辛みが、魚の脂ののりとちょうどよく融合し、層がはっきりしている。ひと口ごとに異なる風味が感じられ、旅行者である私たちの好奇心を絶えずくすぐってきた。

    もう一つの主食は、言うまでもなく新多久名物の白米だ。古い陶製の羽釜で新潟県魚沼産の米を炊き上げ、水は村上の地元の湧き水を使用している。言葉にしがたい香りで、粒はふっくらとし、もちもちと甘く、清らかな湧き水のような透明感を纏っていた。

    副菜も面白く、ほんのりピリ辛の自家製マヨネーズと石鯛の組み合わせも、猪肉のコロッケも、どちらもご飯によく合い、同行者の一人はおかわりを重ねて4杯も食べていた。

    山椒のムース

    またしても意外な緑の一皿、それは山椒のムースだった。

    聞くとやや際どい料理に思えるが、控えめなしびれ感が妙に引き込まれ、甘さの表現もストレート。見た目は地味だが、味わいはまったく普通ではなかった。

    ペアリングは大洋盛や〆張鶴といった地酒が中心だったが、料理との相性は抜群だった。まさに「地の食材には地の酒」という日本らしい特徴を体現していた。

    サービスにも面白い小さな工夫があった。一般的な店ではカウンターの客全員に一本のボトルを見せて回るものだが、新多久では余分にボトルを用意していて、客二人につき一本のペースで置かれ、誰もがラベルの情報を確認しやすくなっていた。

    心のこもった小さな工夫こそが、いつも一番心を動かすものだ。

    食事を通して、ほぼすべての料理に工夫と印象深さを感じた。しかも村上を離れては再現しがたい味わいだった。

    新多久のメニューは、伝統的な料亭のように決まったルールに沿って魚や野菜を調理するのではなく、むしろ食材の潜在力を引き出すことに重きを置き、そのうえでコース全体の流れとバランスを考えている。

    兄の山貝真介さんがインタビューで語っていたように、優れた食材を前にしては、味を足すよりも、調理の技法によってその食材本来の味を引き出す方がいい。

    割烹 新多久

    新潟県村上市小町3-38

    木曜日〜火曜日

    11:30〜14:30 17:00〜21:30

    https://murakami-sintaku.com/menu.html

    テイスティングメニュー 11,000円/16,500円/22,000円

    兄弟による割烹の精密なコントロールにせよ、村上の豊かな物産にせよ、新多久の料理と体験は、書き留めておきたくなるような美しさに満ちている。東京から三時間かけてでも訪れる価値のある店だ。

    次の季節が待ち遠しい!

  • 新潟寿司の双璧、食材の産地が生む職人の力

    新潟は、行けば寿司脳が完全に中毒になる街だ。良質な越後米、雪解けの超軟水、そして山海が交わる豊かな魚介を兼ね備えている。しかもコストパフォーマンスが非常に高く、名店の一番高いコースでも東京の寿司店のランチ価格にすら及ばない。

    村上の割烹 新多久を訪れたあと、新潟では2日連続で現地屈指の2軒の寿司店を訪ねた。登喜和鮨と兄弟寿しだ。どちらも創業50年を超える老舗でありながら、まったく型にはまらない。前者は舎利にトマトを取り入れる小さな発明家、後者はホスト系の深いVネックがよく似合う、クールな寿司の使い手だ。

    まず魅力的なポイントを先に挙げておこう:①東京〜新潟はわずか2時間、②どちらの店も英語対応OK!

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    登喜和鮨

    👨‍🍳 発想力全開の寿司発明家

    💰 25,300++

    📍新潟県新発田市中央町3-7-8(新発田本店)/新潟県新潟市中央区本町通り七番町1151 第一クレジットビル1階(新潟店)

    1954年創業の登喜和、本店は新潟県新発田市にあり、現在は三代目の小林宏輔氏が切り盛りしている。昨年、創業70周年を迎えたタイミングで、小林さんは新潟市中心部に新店をオープンした。現在は二店舗を交互に営業するスタイルで、月曜から金曜は市中心部の新店で寿司を握り、週末は新発田の本店に戻って客をもてなしている。

    登喜和にはいくつかの特徴がある。一つ目は新潟産食材が99%を占めること。二つ目は魚の処理法が多彩なこと——熟成、火入れ、柿酢、独自の味付けなど、伝統にとらわれず、その魚の魅力を最も引き出せる方法を選んでいる。三つ目は舎利の変化——ほぼ一貫ごとに舎利が異なり、食材や季節に応じて赤酢、魚だし酢、柿酢、トマト酢、さらにはエビ殻パウダーやエビ味噌まで使い分ける。米も新発田産の「豊産コシヒカリ」を使用しており、粒感がより際立っている。

    そら豆 山芋

    塩 わさび

    スズキ

    着席してすぐ、ちょっとした驚きがあった。登喜和は詳細な英語メニューを用意していて、食材や調理法を非常にわかりやすく説明していた。さらにはお茶のリストまであり、寿司店でのティーペアリングは本当に珍しい。

    山芋をすりつぶしてそら豆とハト麦を合わせた、温かみのある一皿目。食感の豊かさに一切妥協がない。新鮮なスズキはさっと湯引きし、コリッと締まった歯応えで、地元の魚の実力を物語る。上にのった大根おろしは米油で乳化させてあり、甘みがふわりと立つ。塩とわさびも脇役ではなく、刺身に添えずそのまま食べても、それだけで一品の酒肴になる。

    お酒のペアリングも抜かりない。県内限定の雅楽代、力強い燻香が料理とぴたりと合っていた。

    たけのこ アスパラガス 海ぶどう 魚醤 木の芽

    ヒラメ

    イカ(スミイカ)

    鮎の新子

    寿司が始まる前の酒肴には、「野菜サラダ」と呼べる一皿もあった。アスパラガスの炭の香ばしさ、季節ごとの野菜が新鮮な食感を与え、ソースの魚醤が隠し味——1年熟成させたイワシの発酵液が、シャキシャキの中から旨みをふわりと立ち上げる。魚の姿は見えないのに、魚を食べたかのような満足感。

    地元産のヒラメを昆布だしと塩水で締め、酸味の効いた柚子舎利と合わせた一貫は、バランスが良く爽やかで個性がありながら、噛むと優しい口当たり。佐渡のイカは、着席した瞬間から小林さんが華麗な包丁さばきで細かく切れ目を入れ、冷蔵庫で柔らかくしているのが見えた——口の中で餅のようにとろりと広がる。新子には村上産の鮎が使われていた。

    登喜和の舎利には、コシヒカリの改良種「豊コシヒカリ」が使われている。粒立ちがはっきりとして存在感が強く、現在日本全国でこの米を使う寿司店はわずか2軒しかない。さらに伝統的な羽釜で直火炊きしており、舎利の粒の隙間にほのかな燻香が忍び込んでいる。

    桜鱒 セリ 山独活

    河豚の唐揚げ 鱈の白子+梅肉+紅水掛椒のタルタルソース

    目の前のカウンター越しに、小林さんが軽く炙った桜鱒を「パチッ」と切り分ける様子が見える。皿の上では、桜鱒の柔らかな身とセリの瑞々しい青い歯切れがはっきりとした対比を見せていた。

    続く河豚は外側が黄金色にカラッと揚がり、身は締まっていて、白子と豆乳が皿全体の厚みを支えている。このアップグレード版フィッシュ&チップスは、なかなか面白い一皿だった。

    中トロ 野蒜醤油

    大トロ

    マグロのカマ 越の芽

    中トロは佐渡沖で獲れた36.4kgのクロマグロから、大トロはなんと104kgもある一尾から。新潟はまさに大物の本場だ。

    この二貫の舎利は赤酢に切り替えられていて、味わいは明らかに濃くなっているが、決して出しゃばらず、魚と舎利が美しく調和していた。

    手巻きは再び36.4kgのマグロに戻り、今度は尾の部位を使用。日本の春らしい越の芽と合わせている。美しい魚肉、粒立った舎利、ほのかな苦みのある山菜——満足感のある一貫だった。

    だし茄子

    甘エビ 自家製南蛮海老醤油パウダー添え

    白玉貝

    桜鱒の腹身

    登喜和では、食材そのものはどれも馴染みがあるのに、同じ組み合わせには一度も出会わない。舎利の「味付け」はほぼ一貫ごとに変わっていく。大胆で斬新、次々と目を見張らせながらも、バランスを失わない。

    最後の桜鱒の腹身には、まさかのトマト風味の舎利が合わせられていた。口に入れた瞬間、旨みが弾け、ゾクッとするような驚きが走る。そこに柔らかな身がこの未知の組み合わせの鋭さをちょうどよく包み込み、記憶に強く残る一貫となった。

    稲荷巻

    焦がし玉子

    さすが発明家の小林さん。次回は本店にも訪れなければ!

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    兄弟寿し

    👨‍🍳 気さくで楽しい、イケメン軍団の寿司体験

    💰 25,000++

    📍新潟県新潟市中央区東堀通8番1427-2

    兄弟と登喜和の新店はすぐ近く、ほぼご近所同士でありながら、新潟トップクラスのこの2軒はまったく異なるスタイルを見せる。兄弟は、リラックスした気持ちのまま美しい食材と上質な寿司を楽しめる店だ。

    1960年開業の兄弟は、当初は街角によくある「待場寿司」で、営業時間は深夜1時にまで及んでいた。2016年、東京での修行から戻った二代目・本間龍史氏によって全面リニューアルされ、現在のおまかせ形式となった。

    新潟のそら豆 天豆とは

    値上げ前に兄弟を二度目に訪れた。その「値上げ」も実は22,000円から25,000円になっただけで、なんとなく「一応ちょっと上げておきました」という程度の姿勢だった。

    本間さんは以前、新橋の「寿司処 順」や広尾の「蔵六鮨 三七味」で修業を積んだ。江戸前の手法を基盤にしながらも、処理の仕方には革新を取り入れている。たとえば酒粕で酢を仕込んだり、昆布や椎茸の旨みを閉じ込めた再結晶塩を寿司に使ったりしている。

    スズキ

    200kg 赤身 8日熟成

    兄弟のコースは料理と寿司が交互に進行し、リズムと食感に起伏を持たせている。

    開幕はクエ、4日間脱水したもので、状態の良さが一目でわかる。身は清潔感があり、鮮度と歯切れを両立している。舎利には明確な乳酸感があり、まるで食前酒ならぬ食前寿司のよう。8日熟成の赤身も美しく、夏らしく控えめな脂とやわらかな身がちょうどよく結びついていた。

    ミズタコ 水蛸

    南蛮海老

    のどぐろ

    タコにはミズダコを使用。最大3メートルにもなる、世界最大のタコだ。本間さんがカウンターで調理する傍らで、イケメンの若い板前さんがiPadで図鑑を見せながら、英語と日本語を切り替えて説明してくれた。

    村上の茶で煮て仕上げられており、食感は柔らかいながらも弾力があり、塩気と旨みが絶妙なバランスを見せる。

    続く南蛮海老は兄弟の名物。小さな海老三兄弟が舎利の上にきれいに並ぶ。身はみずみずしく透明感があり、口に入れるとなめらかで甘く、旨みが口いっぱいに広がる。

    海苔の茶碗蒸し

    紅鯛

    桜鱒

    サザエ

    本間さんの料理は伝統に根ざしながら、食材への自信に満ちている。店内には今も昔ながらの「本冷蔵庫」の保冷方式が残されており、氷を使った冷蔵という伝統的な手法をあえて選ぶことで、魚本来の味と質感を守っている。

    紅鯛は透き通るように美しく、繊細で柔らかい。レモンの軽やかな酸味に支えられ、清々しく甘い魚の味わいが極限まで引き出されていて、この時季の春子鯛を代表する一貫と言っていい。寿司の合間には炭火焼きの小さなサザエも挟まれ、噛むと弾け返るほどの新鮮さで、余韻にははっきりとした甘みが残る。食材の良さに、思わずため息が出る。

    イカ

    中トロ

    佐渡 金目鯛

    大トロ

    大腹では「食材とその食べ物」という遊び心が仕込まれていた。漬け醤油にマグロが好んで食べるヤリイカを加えているのだ。ヤリイカを食べて育ったマグロは味が良いとも言われている。

    数ヶ月前の訪問と比べて、酒肴の内容はほぼ変わっていなかった。それでも何度食べても好きになる味で、新潟らしい淡麗辛口の日本酒とは特に相性が良い。たとえば再び食べた佐渡の金目鯛の炙りは、白くやわらかな身がきりっと締まり、レモンがミルキーな香りを引き立てていた。

    寿司そのものについて言えば、本間さんは複雑で凝った構成を強調するタイプではなく、むしろ産地の強みと食材本来の新鮮さを前面に出している。すっきりとストレートな美味しさで、後味には甘さがふわりと残る。もちろん、うなぎ巻きを作る際にきゅうり一本を一気に切り分ける、本間さんのさりげない包丁技の見せ場も見逃せない。

    サヨリ

    アスパラガス

    毛蟹の手巻き

    加茂錦 兄弟寿司 HONMA EDITION

    加茂錦はSugita、兄弟、登喜和とそれぞれコラボ酒を造っており、各店の特徴に合わせて味わいが微妙に調整されている。個人的には兄弟のものが一番好みで、フレッシュで活き活きとしていて、後味がクリーン、鮮度がはっきりしていて兄弟の寿司のスタイルともよく合う。二度の訪問を通して、本間さんはあまり多くを語らなかったが、その一言一言が印象深かった。食事の始めに皆が静かにしていると「そんなに厳しくないですよ、この板前では喋っていいんです」と口を開いたり、写真を撮られると「僕の写真は一枚500円ですよ」と冗談を飛ばしたり。弟子がミスをしても怒らず、ただ一言「登喜和に行きたくなったの?」と聞くだけだった(冷笑)。

    穴子巻き

    玉子

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    兄弟寿司が伝統的な江戸前の技法に新潟食材への理解を融合させているとすれば、もう一方の登喜和は基本的にセオリー通りにはやらない、創造的な革新派だ。まったく異なるスタイルの存在と言える。

    しかし両店とも、新潟の食材を世界に見せるという根本の思いは共通している。発想が自由奔放な小林さん、オールバックで江戸前寿司を握る本間さん、そして村上の新多久のお二人——皆、四半期ごとに新潟を訪れる価値のある料理人たちだ。

    新潟は本当にいいところだ!

  • 新潟で一気に日本トップクラスの名店を巡る方法

    答え:新潟へ行こう。

    個性のはっきりした街だ。特別壮大な観光地はないけれど、一度真剣に食べ尽くすと、ずっと気になり続ける場所。

    今年の食べログランキング発表で、新潟の🥉銅賞店3軒が同時に🥈銀賞へと昇格した。東京以外の都市で、これはかなり珍しいことだ。

    さらに恐ろしいのは、これらの店はどこも予約しやすく、前日でも取れる店すらあるということ。だから新潟へ行くなら、少し前もって計画するだけで、名店を軽々と総取りできる。

    本当に、実力があってしかもハードルの低い街だ。

    新潟は「突然強くなった」わけではない。

    日本海と佐渡島がもたらす魚、トップクラスのコシヒカリと優れた酒米が支える日本酒、そして着実に料理を作り込む店の数々。回転寿司ですら日本一だ。

    この一篇は、一年間で四度新潟を訪れた記録をまとめたもの。地元トップ5の名店から、日本一の回転寿司、極上の洋食、そして居酒屋まで。新潟の美味しい店・美味しい酒処10軒で、旅の予定表を埋め尽くしてほしい。

    まずはブックマークして、1〜2ヶ月前から予定を組み始めるのがおすすめ〜

    🍣 兄弟寿し

    👨‍🍳 毒舌シェフの優雅な寿司

    ⌛️ 予約難易度:⭐️⭐️ —— 2〜4週間前

    新潟への旅で必ず訪れるべき店といえば「兄弟寿し」。

    新潟ミシュランガイドで唯一二軒しかない二つ星の一軒であり、食べログ🥉銅賞を4年連続で獲得——そして2026年、見事に🥈銀賞へと昇格した。

    兄弟の特徴は、寿司の輪郭が非常に繊細で、集中度が高いこと。口の中で一つ一つの魚の個性をはっきりと感じ取れる。精緻、抑制、優雅と形容できる寿司だ。

    訪れるたびに、美味しさの記憶が更新され続ける。

    季節ごとの訪問では、本間氏の板前に一貫した料理スタイルと、魚の風味の細やかな違いの両方を感じ取ることができる。

    冬の訪問で感じた脂と厚みからくる濃厚さとは違い、春先の食材はすでに、より脆さと軽やかさを見せ始めていた。

    牡蠣と白身魚がちょうど旬に入っていた。酒肴のタコ足は村上の新茶でゆっくり煮込まれ、茶の香りが海の風味をより清潔に引き締めている。

    クエは噛んだ瞬間「カリッ」と弾ける甘さ、鱈の腹は昆布締めによって旨みがより締まり濃縮されている。ノドグロは相変わらず新潟の底力そのもので、柔らかな脂の香りはまるで温かみを帯びた甘さのよう。佐渡の定置網から届く大トロはまた違った表現で、清らかな脂が口の中でゆっくりと広がっていく。

    加茂の牡蠣はほとんど口の中でとろけるほどの鮮度、メダイは自らつやめくようなミルキーな甘さをまとい、小さな縞アジは脂と歯切れの間でちょうどいいバランスを見つけ、かすかな銀皮の旨みで締めくくる。

    店を出る瞬間には、もう次の訪問が待ち遠しくなっている。

    過去の記録はこちら👉兄弟寿し|毒舌シェフの優雅な寿司

    🍣 鮨登喜和

    👨‍🍳 型破り寿司の頂点

    ⌛️ 予約難易度:⭐️⭐️⭐️ —— 2ヶ月前

    新潟の数ある名店の中で、登喜和は最も早く🥈銀賞を獲得した一軒。そして料理スタイルが最も大胆な一軒でもある。

    寿司屋ではあるが、常道は歩まない。

    登喜和の板前では、イカを餅のように打ち、炭焼きの蓮根で寿司を握り、赤身の中トロをシャブシャブにして当帰漬けにし、トマト舎利に香箱蟹を合わせ、クエは熟成柚子酢漬けに、寒ブリはミルフィーユ仕立てに……と、まさに万物が握り寿司になり得ることを目の当たりにする。

    寿司という枠組みだけで見ても、この店は新潟で間違いなく唯一無二の存在だ。ほぼすべての一貫に、それぞれ独自の小さな工夫が込められている。だがもっと重要なのは、これらの創意が確かな技術と美意識に裏打ちされているということ。食材を扱う包丁さばきにせよ、調味の精密なコントロールにせよ、真にアイデアがあり、かつ実力も伴っている。ここでは寿司は単に魚と舎利の組み合わせにとどまらない。柑橘や植物の香りを大胆に取り入れることで新たな次元が開かれ、調理法によって食材の食感そのものを操っている。むしろこれは、食材と米が重なり合うことで生まれる料理体験だと表現したい。

    十分に優れた店であると同時に、登喜和は訪れるたびに客にその成長を見せてくれる店でもあり、次の訪問への期待を絶えず膨らませてくれる——きっとまた、この小さな発明家の新作が待っているはずだ。

    鮨登喜和についてはこちら👉ランチは純粋な手握りのみ|ディナーは酒肴付き

    🍣 割烹 新多久

    👨‍🍳 150年続く老舗の継承

    ⌛️ 予約難易度:⭐️ —— 当週予約可

    新潟市中心部から電車で30分の村上。越後国最北端の城下町として栄えたこの古い町には、歴史的な城跡や武家屋敷、有名な瀬波温泉のほかに、1867年創業の割烹 新多久がある。

    現在は五代目を継ぐ山貝真介氏、山貝亮太氏の兄弟によって営まれている。兄が板前の料理を、弟が奥の厨房で味付けと煮込みを担当する。

    見た目は非常に伝統的な割烹店だが、料理の表現は形式に一切とらわれていない。

    茶碗蒸しに葱ソースを添えたり、酒粕発酵させたグチを紫蘇と和えたり、石斑魚に梅ソースを合わせたり、半生の甘エビにキヌアを添えたり、熊肉ハムや紙のように薄い猪肉のしゃぶしゃぶまで。素材そのものは田舎でよく見かけるものばかりに見えるが、その組み合わせと調理には現代的な発想が加わり、意外な印象を残す。

    炭火はもちろん新多久の料理においてとても重要な要素だ。ヒラメは皮側だけをそっと炭火で炙る程度の火入れで、もともと優れた弾力にさらに張りを加えている。長井の鮪は片面を三分ほど炙り、海藻とわさびで香りをより立体的に引き出す。本当の焼き物といえば鯛で、火加減の見極めが実に見事、柔らかさと脂のバランスが美しく、箸で軽くほぐすだけでほんのり桃色を帯びた身が見える。

    最後の押し寿司はやや演出的で、表面を炭火で「ジュッ」と炙ることで、魚の香りと漬物の風味が同時に引き出される。見ているだけでも心がほどけるような瞬間だ。

    前回の記録からちょうど一年、新多久のスタイルの変化を実感できた。料理の内容がより豊かになり、一食全体の「量」も増えたが、負担感はまったく増していない。

    進化を続ける食事体験に、次の訪問への期待が膨らむ。👉割烹 新多久|小さな町で大きな世界を見る

    🍴 UOZEN

    👨‍🍳 新潟食材を完全に表現した洋食

    ⌛️ 予約難易度:⭐️ —— 営業していれば当週予約可

    同じく新潟市中心部から車で30分。UOZENの表現は、世界を見てきた人が山へ戻り、素朴さに立ち返ったような趣きがある。

    この静かで少し謎めいた「田舎」レストランは、すでに食べログ🥈銀賞+ミシュラン二つ星を獲得しており、シェフも国際的な The Best Chef Award を受賞したシェフだ。

    シェフの自然への敬意は、最も素朴な目標に落とし込まれている——それらをすべて美味しく仕上げ、その命を無駄にしないこと。

    UOZENのシェフ井上氏の料理からは、はっきりとしたこだわりが感じられる。どの食材も、彼の手によって最良の状態で表現される。たとえそれがただの白菜であっても。

    味付けのスタイルで言えば、UOZENの料理は決して軽くはなく、しばしば力強い味わいを持つ。しかし見事なのは、どの味も植物や食材そのものに由来していること。清潔で自然、互いに主張し合わず、それゆえ濃厚さも負担に感じさせない。

    完全な記録はこちら👉UOZEN

    🍣 Osteria BACCO

    👨‍🍳 わずか三人で支えるミシュラン一つ星の和伊料理

    ⌛️ 予約難易度:⭐️ —— 当週予約可

    Osteria BACCOは新潟でもかなりマイナーな隠れた名店と言っていい。

    店にいるのは主厨、副厨、ソムリエのわずか三人だけ。それでいてミシュラン一つ星を獲得し、食べログでは新潟市内トップ5にランクイン。フルコースでも人民元換算で約500元しかかからない。

    メニューはイタリアンの味付けを軸にしながら、地元の旬の海鮮や果物、野菜を大量に使用している。食材を過剰に積み重ねることなく、味わいそのもので記憶に残る一皿を作り上げる自信が感じられる。

    完全な記録はこちら👉Osteria BACCO

    🍣&🐓&🍶

    🥢 回転寿司、新潟一の焼き鳥&居酒屋たち

    ⌛️ 当日予約歓迎/🉑ウォークイン可

    かつて食べログの回転寿司全国ランキング1位を獲得し、佐渡島発祥の弁慶。今ではいくつも支店を展開し、新潟に着いて最初に立ち寄る寿司店として選ぶ人も多い。

    地元の魚の強みが、この店の自信を支えている。弁慶の魚のほとんどは佐渡の定置網や日本海の当日水揚げから直接届き、新潟産コシヒカリの舎利と合わさって、全体としてストレートに新鮮で甘みが強く、余計な装飾のない仕上がりになっている。

    注文はとてもシンプル。黒板にその日のおすすめや限定の魚が書かれている。おすすめの盛り合わせを選ぶこともできるし、一つの魚に一杯の酒を合わせながら、一貫一貫じっくり選んでいくこともできる。

    注意点としては、回転寿司店では行列が当たり前だということ。特にピア万代店は、午後の時間帯か、開店前に少し早めに行くのがおすすめ。

    新潟の海鮮の実力を体感できる場所、見逃せない。

    たごは、新潟の地元民の間で最も代表的とされる焼き鳥店の一つ。スタイルは非常に正統派で、奇をてらった技巧はなく、火加減、脂、そして鶏肉そのものの満足感をきちんと突き詰めた、昔ながらの焼き鳥だ。

    皮と脂の表現が実に見事で、例えば手羽先先端を例に挙げると、脂がたっぷりのっていて、外皮は香ばしくパリッと焼き上げられている。罪悪感を叫びながらも箸が止まらないタイプ。

    砂肝はさっぱりと清潔な歯ごたえで、噛むほどに香りが増す。うずらの卵と鶏肉団子は、片方は半熟、片方はしっかりとした食感で、対比が面白い。主食の親子丼は特に記憶に残る一品で、卵は低温でまず「蒸らし」た状態にしてあり、黄身は濃厚、白身は軽やか。ふっくらとしたコシヒカリの上に盛られ、締まった鶏肉と一緒に食べると満足感がある。

    全体的な印象は、美味しくて、実直で、価格も良心的ということ。良質な居酒屋に近い価格帯でありながら、それを大きく上回るクオリティを出している。

    注意すべきは、酒の選択肢があまり多くないこと。飲みに出る前の一軒目として、まずここでしっかり食事を済ませておくのに向いている。

    日本酒×チーズケーキ専門店 SAKE恋JAPANは、店名にほぼすべての特徴が率直に表れている店。明らかに若い客層寄りの日本酒バーで、雰囲気はとてもリラックスしていて、料理も美味しく、価格も良心的。

    酒のラインナップは特にハードコアというわけではないが、選び方が面白く、飲みやすい季節限定酒もあれば、あべのような話題の酒蔵の酒もある。厳格に飲むタイプの日本酒バーというより、飲みながらおしゃべりできる場所という感覚に近い。

    意外と美味しかったのは牛レバーで、下処理がとても丁寧で臭みがなく、食感は柔らかく少し甘みがある。デザートのチーズケーキは看板メニューで、試してみるとバスク風が最も安定して美味しく、乳の香りと甘苦さのバランスが一番良かった。

    それに比べると、五十八はぐっと昔ながらでハードコアな雰囲気。非常に典型的な新潟の地元居酒屋で、しっかりとした郷土の酒の肴を、壁一面の新潟の地酒とともに提供している。

    料理には余計な飾りがなく、酒に合う、実直で、少し家庭的な味わい。季節に応じておすすめの食材が変わり、量もしっかりしている。酒のラインナップは明らかに奥深く、定番の銘柄から地元限定の酒まで揃っていて、新潟の日本酒を本格的に一巡できる場所だ。

    客の多くは仕事帰りにくつろぎに来る地元の人たちで、雰囲気はとても生活感があり、居心地がいい。一晩じっくり語らいながら飲む、その日のメイン会場にぴったりだ。

    TABI BAR & CAFE SUZUVELは新潟駅前で人気の小さなバーで、多くの日本酒好きにとって新潟到着後最初の一杯、あるいは帰る前の最後の一杯を飲む場所でもある。

    最大の強みは、なんといっても酒のラインナップ。新潟の地元酒蔵によるグラス売りの選択肢を数多く揃え、定番銘柄から少し珍しい酒まで見つかる。酒陣(酒フェス)期間中には「酒陣に出品していない酒」だけを集めたページまで用意され、参加できなかった旅行者の心残りを埋めてくれる。新潟の地酒を一度に横断的に飲み比べたい人にはとても優しい店。

    料理のスタイルはカフェバー寄りの軽食路線で、気負わない小皿料理が中心、洋風寄りの軽い料理が多い。前の二軒に比べると値段はやや高めだが、せっかく来たのだから、酒は全部一通り飲んでおきたいところ。心残りを作りたくないでしょう?

    さて、次はどこへ行くか、当ててみましょうか?

  • Amaranthus|猛烈な生ハムテイスティング

    5回訪れても、まだ驚きがある街——それってどんな感覚だと思いますか?

    それが新潟でした。わずか5席の小さな店で、十数種類もの生ハムが食べ放題になっているテイスティングに出会ってしまったのです。

    探究心はすっかり刈り取られ、満足感もワンランク上でした。

    ナイフが下りる瞬間、まず脂の香りが目を覚まします。あの複雑な香りをまとった脂は、なかなか拒めるものではありません。港と日本酒の街で、「生ハム」という理解そのものが更新されました。

    Amaranthus(アマランサス)には、たしかに独自の凄みがあります。生ハムを臆面もなくメニューの中心に据え、脂・部位・熟成・切り方を大胆に使い分けながら、客が本当に好きな味わいを見つけられるよう、じっくりと導いてくれる。そして一皿一皿の料理で、生ハムと他の食材を組み合わせては、1+1が2以上になる瞬間を何度も作り出していきます。

    お店はInstagramで告知される日程に合わせて、アラカルトの日とコースの日に分かれています。初訪問だった私たちは、迷わずフルコースに挑戦することにしました。

    メニューはとても短い。けれど、正式なメニューが始まる前に、天野シェフによる十種類以上の生ハム食べ比べが用意されているとは思いもしませんでした。部位の違い、温度の違い、厚さの違い、そして合わせ方の違い——まるでミニ講座のように、生ハムの香りと味わいの由来、その組み合わせ方を、丁寧に解きほぐして見せてくれます。

    店で主に使われているのは、2年熟成させた新潟県産の豚肉。ほかにも味噌・山椒・柚子で風味付けした熟成バージョンや、北海道産豚の背脂、パンチェッタ、さらには熟成させた雄牛の肉まで。何より驚くのは、そのほとんどをシェフ自らが作り、熟成させていること。熟成期間は6ヶ月から3年までさまざまで、変化の幅も実に豊かです。

    つまりこれは、シェフ個人の理解そのものを表現した一皿一皿だと言えます。

    もも肉を一人二切れずつ、2分の間隔をあけて提供し、温度の変化を感じさせてくれます。

    「必ず手でつまんで食べてくださいね!」

    最初のひと口は、まず香りが立たなければなりません。肉と脂の香りはとてもストレートで、どこか猛烈でさえある。極薄に切られた肉は、そのわずかな時間の中でも、空気と温度によってゆっくりと「変化」していくのに十分でした。2分後のひと口は、明らかに香りが強く、塩気も増し、もっちりとしています。

    2番目に登場したのは、筋肉に近い前側の部位で、脂の主張は比較的控えめ。薄切りと厚切りで、繊維の違いを引き出します。

    薄い一切れは香りがやわらかく、伸びやかで、口の中にゆっくりと広がっていくよう。厚い一切れは繊維感がしっかりと出て、噛むほどに肉そのものの存在感を強く感じます。かすかにミネラル感があり、旨みが後からこみ上げてくる。同じ部位なのに、まったく違う表情を見せてくれました。

    続くお尻の部位は、想像どおり美しい脂を纏っていました。脂の香りに加えて、どこか惹きつけられるようなミルキーさもあり、余韻もとても長い。ストレートでありながら、品も感じさせる味わいです。

    風味付け熟成のパートでは、まず酒粕バージョンを比較しました。使われているのは夏場の筋肉質な豚で、脂はやや少なめですが、夏は水分を多く含むため、まず塩で脱水処理をしているそうです。

    最初に飛び出すのは塩気、続いて想像以上にはっきりとしたナッツの香り、そこにひとすじのカビのような風味が加わり、味わい全体がより立体的になります。常温に近づくにつれ、肉そのものの存在感と塩気がさらに際立ってきます。

    糠漬けの一切れも、なかなか興味深いものでした。旨みが非常に強く、少し不思議なほど。けれど食べ進めるうちに、口の中からナッツのような香りがじわじわと立ち上がり、味わい全体が別の方向へと切り替わっていきます。

    9切れ連続で生ハムを食べたところで、まさかここからが本番だとは思いませんでした。

    次に登場したのは、2年半熟成の雄牛肉。皮がないため、乾燥しやすい外側の層はあらかじめ削ぎ落とします。使われているのは牧草だけを食べて育った雄牛の外もも肉で、今年獲れたのはこの1頭のみとのこと。牛の風味がとても強く、ひと口でその存在をはっきりと主張してきます。中にはごく細やかなスパイス感、さらにはほのかなシナモンの気配まで混じっていました。

    そして再び豚肉へ。北海道産豚の背脂を使った、糠漬けの純粋な脂身。まるで雪のように澄んだ脂で、本当に見事でした。

    さらに進むと、1+1>2の段階に入ります。

    まず二切れを巻いてひとつに。中に包まれた脂は、口に入れた瞬間ほとんど溶けるような感覚を与え、続いて赤身の存在感がしっかりと立ち上がってくる。対比は鮮やかでありながら、互いによく馴染んでいます。

    そして再びあの純粋な脂身に戻り、今度はオリーブオイル、パン、塩と合わせます。繊細で、ほとんど抵抗のない溶け方に、一瞬で心をつかまれました。オリーブオイルとパンがわずかな支えとなり、脂はただ「溶けて消える」のではなく、受け止められる着地点を得たかのよう。最後に口の中に残るのは、ナッツと植物を思わせる余韻です。

    こうして何度も行き来しながら重ねられた脂の爆弾は、まさに華やかで大胆、そして間違いなく美味しいものでした。

    そういえば——生ハムをよく食べる方ならご存知の通り、他店のハムスライサーはたいてい黒色。けれど彼は、自分専用に白いものをオーダーしたのだそうです。

    北海道産豚の酒粕漬けパンチェッタ。お米由来の甘みが、肉にしっかりと移されているのがはっきりとわかります。皿に残る脂の粘り気は、まるで皿ごと剥がしてしまいそうなほど。本当に甘く、そして本当に厚みがある。けれど最後には、まるで海苔のガラスのような香りがふわりと立ち上り、口の中の記憶を明るく照らしてくれます。

    そして次に登場したのが、この日一番衝撃を受けた超弩級の一皿でした。

    💣ブリオッシュ+オリーブオイル+溶けきっていない一塊のバター+パンチェッタ+はちみつ。

    熱いものから冷たいもの、そして柔らかいものへと、層が緊密に連なっていくのに、不思議とまったくくどくない。まずパンのサクサク感と空気感、きめ細やかな質感、続いて脂の香り、さらに奥へ進むとはちみつが顔を出し、すぐ後にオリーブオイルの植物的な感じが現れて全体を整えていきます。

    本当に見事でした。罪深く、そして抗いがたい。

    美味しすぎるにもほどがある。まるで食感と香りだけで情報の非対称を仕掛けてくるような一皿でした。

    ここまで来て、ようやくこの「テイスティング」全体が締めくくられました(正式なメニューが始まる前の序章、といったところでしょうか)。

    15年熟成の老豚生ハムを一切れ。すでに風味は非常に強く、ひと口で食べると塩辛く感じるほどなので、シェフはゆっくり、少しずつ味わうことを勧めてくれました。

    本当に香り高く、ミルキーさや濃厚なクリームの気配がたっぷりと広がり、野性味も十分。成熟の度合いがはっきりと感じられ、まさに一頭の豚に「大人の味わい」を描き出したかのようでした。

    正式なコースが始まると、雰囲気は一転して爽やかになります。

    まずは隣町・新発田から届いた、瑞々しく季節感あふれるアスパラガス。使われているのはオリーブオイルと粗塩だけ。しゃきしゃきとして水分たっぷりで、この一本のいちばん清らかな面をそのまま蒸し上げたかのよう。添えられたレモンマヨも美しく、爽やかさをもう一段引き立ててくれます。

    そして、不思議な組み合わせが登場します。自家製ラード——実は柚子と山椒で漬け込んだ豚の背脂——に、新発田産・越後姫いちごを合わせ、さらにオリーブオイルとビーツを少し添えたもの。

    食感は想像とはまったく異なり、中央のひと切れにはもち米のようなねっとりとした食感さえあり、その上には、はっきりとした美味しい塩気がのっています。

    少し惜しかったのは、初夏に差し掛かったこの時期のいちごがすでに旬を過ぎていたこと。果実の香りが明らかに二段階ほど足りず、それまでの複雑さと比べると、少しくどく感じられてしまいました。

    自家製パンチェッタと越前浜産の小さなとうもろこし。妙味は、とうもろこしの熱が脂を「とかして」いくところにあります。ともすれば重たく感じる脂の香りが、とうもろこしの甘さと水分によって軽やかに持ち上げられ、逆にパンチェッタの塩気がとうもろこしの甘さをより一層引き立てる——そのしゃきっとした瑞々しさも心地よい一皿でした。

    ——料理全体からじんわりとした温かみが伝わってきて、なおかつシンプルで直接的な味わいでした。

    もちろんAmaranthusでは、油条(揚げパン)に塩漬け肉を合わせるという、日伊ミックスの定番料理も外されていません。ここでは先ほど紹介した酒粕漬けの夏豚を使用。サクサク感も塩気も十分ですが、温度差がやや大きめ。食べていると、まるで「冷たい豚の角煮を熱々のご飯にのせた」ような既視感すら覚えます。

    一方、フグの白子巻き生ハムは、少し季節外れな印象でした。夏の白子はもともと繊細で、あまり複雑な組み合わせには耐えられません。挟まれたトマトは色も酸味も香りも美しかったものの、ひと口食べると最初に浮かんだのは……苦い、とにかく苦い、という感想でした。

    日本の懐石料理店では、ご飯のバリエーションをいくつも目にするものですが、まさか生ハム専門店でも出会えるとは思いませんでした。味噌ハム巻きご飯、味噌ハム巻きご飯に海苔と生姜を添えたもの、パンチェッタ巻きご飯。

    ラード拌飯、寿司、燻製肉丼。

    ひと口ごとに、それぞれまったく違う個性を放っていました。

    メインはレアに仕上げた鹿肉。すっきりとした冷ややかさが強く、傍らの脂と補い合う組み合わせでした。成立してはいるものの、印象に残りづらい一皿ではありました。

    けれど意外にも、メニューにはないパスタをシェフがサプライズで用意してくれていました。

    美しく熟成した生ハムの内側の赤身をすりおろして味付けに使用。麺と旨みがほとんど一体化しているかのよう。ミルキーな香りが特に印象的で、麺自体にも心地よい歯ごたえが残っており、口の中の体験が一気に華やぎました。

    小さいながらも、しっかりと驚きを与えてくれる一皿でした。

    最後は練乳ミルクアイスクリームで締めくくり。香りは十分で、上にかけられたオリーブオイルと粒立ちのはっきりした塩が、この食事全体を貫く脂・塩気・香りというテーマを、もう一度しっかりと締めてくれました。

    このお店は本当に、厨房こそ驚くほどシンプルなのに、だからこそシェフ個人の考えがくっきりと浮かび上がってきます。生ハムテイスティングのパートは味わいの起伏がはっきりとしていながら、前後のつながりにはきちんと筋が通っていました。そしてメイン料理のパートは、日伊料理によくある流れの中に、巧みに落とし込まれていました。

    東京にある同テーマの、あの予約困難な店(——そう、nacolのことです)と比べても、正直かなりの差をつけて上回っていると言えるでしょう。

    惜しいのは、シェフの表現がやや猛烈すぎるところ。フルコースの後半にさしかかると、多くのゲストがどこか満腹感を通り越した「過多」を感じてしまうかもしれません。脂、香り、厚みがどんどん積み重なっていき、最後にはやや胃にもたれる感覚が残ります。

    次回はぜひアラカルトに挑戦してみたいです!

    ——楽しさをちょうど良い分量に収められたなら、きっともっと心に残る店になるはず。

    Amaranthus(アマランサス)

    新潟県新潟市中央区寄居町332-61

    ※営業形態・営業日はInstagramをご確認ください

    AVG Price ¥20,000〜30,000(税込)

  • 魚善|新潟の山里に宿る名店、自然の恵みへの感謝

    新潟の山里に、これまで何度もタイミングが合わずに訪れられなかった店がある。シェフが狩りに出ていたり、研修に出ていたりで。今回、新潟の大雪の中でついに実現した。

    この、俗世を離れたような、どこか謎めいた「田舎」のレストランは、すでにTabelogの🥈銀賞店+ミシュラン二つ星、シェフも国際的なThe Best Chef Awardを受賞した一刀の料理人だ。まるで、北京郊外の小さな村に、世界中の食通が焦がれるような西洋料理の名店が現れたような感覚だった。

    UOZENのシェフ、井上和洋は香川県出身で、若い頃は日仏レストランや居酒屋で修業した経歴を持つ。2013年、妻の実家がある新潟県三条市に戻り、妻の実家が営んでいた料亭「魚善」を今のUOZENに改装し、同時に昔の看板もそのまま残した。


    彼らの理念は三つの言葉で表される:Chasse / Pêche / Nature——シェフ自らが野菜を育て、魚を釣り、狩りをする。自然に分け入って食材を得ることを料理の出発点とし、「命をいただき、できる限り無駄にしない」。日本語のメニューの細部には、その隠れた一文「自然大好き」を見つけることができる。

    自然からもたらされる食材をすべて美味しく仕上げること——それがおそらく、彼が語る「無駄にしない」の出発点なのだろう。

    店の入口の小さな額縁には、店のモットーも飾られている。

    私たちは「百姓」(古語で“物を作る人”の意)として仕事をしているが、それはお金のためではない。「美味しい、たまらない」と言われるような食材を作り出すこと。それが私たちの本分だ。

    料理人として、食材を理解し、それを活かして一皿、二皿の料理を生み出すこと。それが本分だ。

    食べる者として、目で感じ、舌で味わい、頭を酔わせ、心を満たすこと。そうでなければ、本当の「美味しい」料理には出会えない。それもまた本分だ。

    井上の料理からは、彼のこだわりも感じ取れる。どんな食材であっても、たとえ一玉の白菜であっても、彼の手にかかれば最高の状態で表現される。

    剣先イカ パプリカソース

    猪肉のリエット セロリ

    最初の数品は、テーブルではなくソファ席で、暖炉を囲みながらゆっくりと味わう形で出される。窓の外では大雪が降り続いていて、それが室内の暖かさをより一層引き立て、友人の家を訪ねたかのような温もりがある。しかし出てくる料理は、彩度が高く、“攻撃的”とも言える味わいで、この上なく心地よいシチュエーションの中で、味覚をぐっと目覚めさせてくる。

    剣先イカから始まり、合わせるのはパプリカソース。丸いスプーンで一口ほおばると、ソースの濃厚なミルキーさとナッツの香りがまず広がり、イカ自体も十分に新鮮で、しっとりとしながらも弾力のある食感。「海の味わいなのに、まろやかな厚みを持たされている」という不思議なギャップがある。

    もう一方は猪肉のタルト。健康的な緑の見た目の下に、燻製にした肉のペーストが隠れている。風味はストレートで力強い。真ん中に添えられた酸味のある漬物が、脂の重さを一気に切り開く。

    二つの前菜は、一つは山、一つは海——対比は極めて強いが、どちらも強いインパクトを持つ。一瞬で「夕食が始まった」という期待感に火をつける。

    猪肉のサラミ

    ジビエのコーンドッグ

    数千万円分の在庫を抱えたワインセラーに吊るされていたのは、意外にも自家製サラミだった。山椒味とほんのり辛味のある味、二種類。食前にシャンパンと合わせて出される。

    そしてソファ席での最後の一品は、ジビエ版コーンドッグ

    揚げ方が実に見事だった。外側は極めてサクサクとした衣、噛み割ると中にはふんわりと薄い生地の層があり、サクサクとふわふわの境目がとてもきれいに分かれている。

    中身の餡もどこか不思議で、噛んでいるうちに雲南ハムの月餅を思い出させる——あのほのかな甘みと肉の脂の香り、でもそれよりもう少し複雑。細かく刻まれた肉の餡が噛める一方、隙間からはサクッとした肉の粒とわずかなジビエの香りが顔をのぞかせ、後味にはかすかな痺れも残る。上に添えられた小さな葉と「露」のような調味が、ほんのりとした塩気と清々しさを補い、揚げ物の重さを明るくしている。

    不思議なほど美味しい。

    牡丹海老 ブイヤベースのジュレ

    カウンターに着席すると、最初の“正式な”一皿が出てくる。とても美しい牡丹海老

    新潟は漁港の街で、日本海のすぐそば。佐渡のマグロだけでなく、他の食材も一級品の新鮮さを誇る。これが、新潟が大都市に対して持つ天然のアドバンテージだ。

    外側のジュレは海老の殻から取ったコンソメで、まるで鮮度をそのまま封じ込めたよう。中心を包む牡丹海老には、コリコリとした食感とほのかなもちもち感があり、噛んだ瞬間に鮮度が口の中で弾ける。

    上にちょんと乗ったソースは、ブイヤベースの陰の主役——ルイユ。ニンニクの香りとほのかな辛味を持つマヨネーズで、スパイスとハーブの「豊かさ」が絶妙に効いている。

    「食べていると、まるで博識な海老を味わっているような気分になる。」

    まさに天の時、地の利、人の和が揃った一皿。豊かで美味しすぎて、味わうスピードをどこまでも落としたくなる、最後の一口を食べ終えたくないと思わせるほどだった。

    香箱蟹 鮭の卵 コシヒカリの脆

    冬の高級店の常連ゲストである香箱蟹が、ここでは独自の記憶に残る一面を見せる。ほぼ最初から最後まで「高い旨味」の道を突き進んでいく。

    器の中は情報量が非常に多い——蟹味噌の濃厚さと脂、ハーブの清々しい香り、蟹卵のプチプチとした弾ける食感、さつまいものもたらす甘くねっとりとした食感、そして甲殻類特有の鼻に抜ける香り。旨味は決して単調ではなく、一口ごとに違う組み合わせに出会える。

    同時に、バランス感覚も極めて優れている。濃厚だがくどくなく、旨味は強いが騒がしくなく、甘みと塩気もぎりぎりのラインで美しく収められている。まるで幾層にも重なった扉を一つずつ開けていくような体験で、一番下の香箱蟹の卵にたどり着いた時には、“ふいに宝物を掘り当てた”ような小さな驚きがある。

    ちょうどこのタイミングで小さなパンが運ばれてきて、我慢できずに器の底までソースを拭い取ってしまった。外側は硬めだが、中は極めて柔らかく、ほのかなアルカリ感がソースとぴったり合っている。

    「もう一尾追加しますか?」
    「でも、あとの料理のためにお腹は残しておいてくださいね!」

    ジビエのパテ

    ジビエで作ったパテは、メインの重い料理が始まる前の、ちょっとした一息のような存在。

    最近のパテは鹿肉が主役で、風味がしっかりとしていて、思わず速度を落として、ゆっくり噛みしめてしまう——本当に美味しくて、お酒も進む。

    添えられた漬物も面白く、ニンニク、トマト、柿がそれぞれ酸味・塩気、濃厚さ、甘さに対応している。漬物を挟むと、一口ごとのパテがまた新しい表情を見せてくれる。

    白菜 黒にんにく コンテ

    前菜とメイン料理の境目あたりで、一見素朴に見えて、実はUOZENの定番料理である一皿が出てくる:雪下白菜の炙り焼き


    白菜は丸ごと雪の中で熟成させたもので、甘みがより純粋になっている。客が席に着いた瞬間から、じっくりとオーブンで焼き上げていく。ジュラ地方の黄ワインでソースを作って味付けし、自家製の黒にんにくソースと極薄にスライスしたコンテを添える。

    一口食べると、「一玉の白菜」への期待をはるかに超えてくる。黄ワインのソースが白菜の清らかな甘みを純粋でクリーンに引き出し、植物の甘さを最も澄んだ位置まで引き上げる。黒にんにくが発酵の奥行きを少し加える。そしてコンテはソースに引き立てられて、ミルキーさとナッツの香りが「剥き出し」になり、時間が育んだあの二層目、三層目の香りを完全に開かせる。

    すべての要素が完璧なバランスの中にある——清らかな甘み、ナッツ感、発酵、ミルキーさが互いに引き合い、互いを引き立て合っている。

    人生の大白菜。

    猪肉 そば粉のガレット

    数日前、井上さんのインスタで獲れたばかりの猪の投稿を見かけて、今回は何かすごいものが食べられそうだと、なんとなく感じていた。

    果たして猪肉は登場したが、それがそば粉で作ったトルティーヤと一緒に出てくるとは思わなかった。猪肉の風味はもともと厚みがあり、野性味があり、わずかに野性的な甘い脂を帯びている。そばの穀物の香りは乾いていて冷たい。そして横に添えられた山椒ソースは、サバイヨンの技法で軽やかな質感に仕立てられ、香りと痺れを口の中で丁寧に整えていく。

    ソースの香ばしさ、清々しさ、柔らかさ、ふわふわとした質感——すべてが揃っていて、まるで粗野な山野の味を突然「きめ細やかな」ものへと翻訳したかのようだ。その瞬間、中国東北地方の卵味噌クレープすら思い出させる。

    本当に香ばしくて、ただただ美味しい。

    天然なめこ ツキノワグマ 魚沼スッポンのスープ

    ジビエ好きの店なら、熊は絶対に外せない。しかし出てきたのは意外にも、清らかな香りに仕上げられたものだった。魚沼のスッポンで取った澄んだスープに、なめこと平茸を落とし、セロリの緑の香りを一筆添える——香りを嗅ぐだけで立体感が伝わってくる。

    口に入れると、それぞれが違う魅力を見せる。なめこは脆く甘みがあり、噛むと水分と弾力が感じられる。ツキノワグマは脂の甘みと野性味のバランスが取れている。具材の中にはスッポンのエンペラも少し隠れていて、もちもちとした粘りがあり、旨味をさらに引き締めているようだ。

    清らかさ、旨味、脂、きのこの香りが層になって現れ、この温かい一椀の中に集結していく。

    新潟の野鴨

    メインの最後の一皿は、土蜂蜜で焼き上げた新潟の野鴨。皿には三つの部位——皮付きの鴨胸肉、鴨もも肉、鴨のヒレが盛られている。

    全体の味付けはかなり主張が強く、ソースの酒の香りと酸味がはっきりとしていて、鴨胸には明確なレバーの香りがあり、ヒレは小さいながらも美しく柔らかい。

    ただ、おそらくその“正統さ”ゆえに、この食事体験が絶えず上昇し、一段ずつ扉を開いていくようなリズムの中では、この締めくくりはやや平坦に感じられた。

    UOZENのワイン選びについて、もう少し触れておきたい。

    シェフ自身がワイン愛好家で——一晩に6名しか入れない小さな店にもかかわらず、丸々二つ分のセラーの品揃えがある。

    ペアリングももちろん良いが、個人的にはむしろ単品を選ぶ方が好みだ——貴重なヴィンテージも含め、じっくり掘り下げる価値のあるボトルワインが揃っている。

    好奇心が旺盛であれば、日本ワインは実に良い選択肢になり得る。多くの日本ワインは、こうした店でしか出会えず、しっかりと味わうことができ、同時に料理との相性も非常に良いからだ。

    和梨のシャーベット

    栗のアイスクリーム

    熟成栗のモンブラン

    新潟はちょうど梨の季節で、駅ではどの店も梨を使ったお菓子を売っている。プレデザートは和梨のシャーベットで、柚子の皮がぱらぱらと散らされている。梨と柚子の澄んだ爽やかさが、一瞬で口の中を“晴天”のように洗い流す。香りは濃厚だが、後味はとてもクリーン。

    メインのデザートは完全に冬へと戻る:🌰栗の二種仕立て

    片方はアイスクリームだが、温度が驚くほど“常温に近く”、口に入れても氷というより、ミルクと栗の香りを広げて嗅がせてくれるような感覚。

    もう片方は低温で熟成させた栗のモンブラン。柔らかな栗のペーストが構造を軽やかに仕上げていて、中には丸ごとの大きな栗が隠れている。底はメレンゲでサクサクとした空気感を支え、甘さは絶妙に抑えられている。最も見事なのは、ルバーブ由来のあのわずかな酸味が、栗の甘い香りを引き締め、長く引き伸ばしていること。

    最後はとろりとしたブルーベリータルトと、白チョコとよもぎのわらび餅でこの夕食を締めくくった。

    新潟の大雪の中、この一食はむしろこの上なく完全で、格別なものに感じられた。柔らかな空間の中に、彩度の高い風味が差し出される——それはまるで、自然が作り出した雪国を、食卓の感性へと翻訳したかのようだった。どの一皿も、組み合わせから見せ方まで、新潟の食材の強みを存分に活かしていて、季節感がはっきりと描かれつつ、同時に現代的な審美眼と秩序感も備えている。

    世界を見てきた人が、山里に戻って原点に返る。

    シェフは自然への敬意を、最も素朴な目標の中に落とし込んでいる——それらすべてを美味しく仕上げ、その命を無駄にしないこと。

    味付けのスタイルで言えば、彼の味は決して軽くはなく、しばしば力強い。しかし見事なのは、そのすべての味わいが植物や食材そのものに由来していて、クリーンで自然、互いに主張を譲らないため、濃厚さも負担に感じられないことだ。

    それは山野における究極のバランスだ——ジビエは厚みを持ち得るし、ハーブは澄み渡り得るし、発酵は深みを持ち得る。しかし最終的には、すべてが同じ“ちょうどいい”境界線の中に収められている。

    新潟は大雪でバスが運休するほどだった。食事を終えて9時過ぎに駅に戻ると、ちょうど1時間遅れた急行電車に間に合い、37分で市街地へと戻った。

    この短い山への旅は、それだけの価値があった。山里の食材は季節ごとに素早く移り変わり、メニューもきっとすぐに更新されるだろう。もう次回の訪問が待ち遠しい。

    RESTAURANT UOZEN

    新潟県三条市東大崎1-10-69-8

    [水~金]
    18:00~18:30入店 一斉スタート
    [土・日]
    11:30~11:45入店 一斉スタート
    18:00~18:30入店 一斉スタート

    Chef’s Menu  ¥19,360++

  • 兄弟寿し|クールを装う策士の、優雅な寿司

    新潟を訪れるたびに、必ず立ち寄る店がある。「兄弟寿し」だ。

    板前でVネックのベストを着て、オールバックの髪型を決め、毎日インスタのストーリーで感謝の投稿をリポストしながらも、客の「兄弟すし」という表記に❌をつけて「「兄弟寿し」であって「兄弟すし」ではない」と訂正する——見た目はクールぶっているが、実は策士な主厨だ。

    しかし同時に、新潟のミシュランガイドで二つ星を獲得した数少ない2軒のうちの1軒(もう1軒はUOZEN)でもあり、Tabelog Awardの🥉銅賞を4年連続で受賞している寿司店でもある。

    美味しい。本当に美味しい——それも、訪れるたびに記憶を塗り替えていくタイプの美味しさだ。

    彼の寿司は輪郭が細く、集中度が高い。口の中で一つひとつの魚の個性がはっきりと感じられる。精密で、抑制が効いていて、優雅——そう形容できる寿司だ。

    1960年に創業した「兄弟寿し」は、現在二代目の本間龍史が受け継いでいる。高校卒業後に上京し、江戸前寿司の名店系列で10年ほど修業。2011年前後に新潟へ戻り、家業を立て直した。

    目指しているのは東京の再現ではなく、「新潟前寿司」を作ることだと本間は言う。江戸前の技法を新潟近海の魚に用い、米も水も酢も酒も、できる限り県内で完結させる。

    前回の訪問から半年が経っていた。今回は予約名も違っていた——それでも、店に入った瞬間から、板前もホールもほぼ全員が元気よく次々と挨拶に来てくれた。「お久しぶりです!お土産ありがとうございます。」そんなふうに覚えていてもらえる感覚は、とても直接的で、そして温かい。

    いつも通り、まず小さな揚げ物が出てくる。酒を飲みながら味覚を開いていく。そして多くを語ることなく、すぐに寿司が始まる。

    佐渡島の真鯛、上質で新鮮な白身。身にはコリッとした弾力があり、噛むほどに味わいが細く長く伸び、じわじわと甘みが立ち上ってくる。清らかで、余韻がある。

    鰆にはかすかな燻香があり、身の柔らかさもちょうどよい。脂の甘みが燻し感によって軽く持ち上げられ、バランスがとても滑らかだ。

    板前で座る楽しみの大部分は、料理人が食材をどう扱うかを見る過程にある。今日は目の前で骨ごとさばかれる鰻だった。「チャッチャッ」という音の中、本間の包丁さばきは無駄がなく鋭い。数分で厨房へと送られていった。

    味も食感も、目一杯引き出されていた。火入れは肉の繊維をちょうどよく見せていて、骨に近い部分にはわずかに「生」の質感すら残り、余韻の甘さもより直接的だった。皮は締まってパリッとしていて、口の中でその音がしっかりと立つ。塩加減とわさびの清々しい香りも実に安定していて、旨味を引き立てつつも主張しすぎない——鰻一貫の輪郭全体を、より鮮明に描き出しているようだった。

    仕込みから口に運ばれるまで、客が聞き、嗅ぎ、見て、味わうすべての瞬間に、無駄が一つもない。すべてが本間の掌握の中にある。

    甘海老は兄弟の看板料理だ。殻を剥いた3尾を重ね、板前に出す直前、一気に引いて殻を外す。

    いつも通りクリーミーな南蛮海老だが、この季節はより身が締まっている。甘くシャキッとした食感に加え、殻の中の旨味もしっかりと感じられた。

    続いてのどぐろ。半生の柔らかさと密度のある鮮度に加え、余韻には生育過程からのつながりも感じられる。のどぐろは成長の過程で南蛮海老を捕食し続ける生き物だ。だから本間の板前でも、いつも海老の後にのどぐろを出す。この自然の摂理が、板前でもそのまま受け継がれている。

    「写真、ちゃんと撮れましたか?」

    寿司が置かれた瞬間にカメラを構えたら、すぐにからかわれた。

    今日のマグロも特徴的だった。80kg、佐渡島の定置網で獲れたもので、豊洲市場を一度も経由することなく、そのまま食卓に運ばれてきた一本。

    赤身は締まっていて、わずかな血の酸味とタンパク質特有のシャキッとした食感がある。噛むと味わいはとてもストレートで、清らかだ。中トロは甘みがより明確で、豊かな脂の中で質感もより柔らかい。

    集中度の高いマグロ二品のあと、リズムが不意に変わり、酒肴からクリーミーな爆弾が登場した——鱈の白子の炙りだ。

    白子がここまで「優雅」に仕上がるとは思わなかった。外側はただ香ばしいだけでなく、わずかな筋のある食感に炙り上げられていて、噛むと少し弾力がある。外側の歯ごたえから、中のほとんど溢れ出しそうなクリーミーな質感へと移り変わっていく層の作り方が非常に明確で、ほぼ完璧だった。同時に、白子の旨味は口の中に長く残り、ミルキーな香りも十分でありながら、くどくない。

    最後にちょうどよい塩気が、その濃縮された旨味を潔く引き締める——高濃度、高集中度でありながら、余分な脂っこさは一切ない。

    白子はクリーミーであるだけでなく、これほど繊細にもなれるのだと知った。

    そしてここから、本領発揮の時間が続いた。

    醤油漬けのイカと大トロの対比が魅力的だった。大トロの脂は極めて柔らかな鮮度で、ほとんど口の中で溶けていく。そこにわずかな筋感とかすかな咀嚼の香りが混じる。まるで脂の中に細い糸を一本通したような感覚で、口の中にほどよい仕事を与えながら、香りをより長く引き延ばしていく。

    鯵に横一文字の切り込みを入れ、あらかじめ葱のすりおろしを身に仕込んでおく。入り口はまず皮のパリッとした食感、続いて新鮮な青魚特有の澄んだ魚の味わい、その後ゆっくりと葱の香りが広がっていき、銀皮特有の旨味が薄い光の膜のようにその上に重なる。さらにシャリが優しく口の中をまとめ、この一貫の香り全体を引き締める。

    途中に炭焼きの椎茸が一口挟まれ、味覚に一息つかせてくれる。最も意外だったのは軸の部分——清々しくシャキシャキとしていて、まるで森の質感そのものが運ばれてきたかのようだった。

    そして満を持しての蟹巻き。蟹味噌の濃厚さ、蟹の卵の香りとはじける食感、どちらも十分に感じられる。注目すべきは、先ほどのウニの時よりも薄い海苔に変えている点で、意識をすべてそのはじける鮮度に集中させている。

    食事の締めは、魚の骨で取った味噌汁だった。

    そして最後の一杯は、必ず「兄弟寿し」のために特別に造られた加茂錦を頼むことにしている。

    優雅な雰囲気やオーラをまとった寿司職人は多いが、寿司そのものの味わいに「優雅」という言葉を使いたくなる店となると、実は少ない——兄弟はその数少ない一軒だ。加茂錦のこの特別な酒も、本間さんの寿司の特徴にちょうど寄り添っていて、繊細でありながら力強さも兼ね備えている。

    普段は「6+10」の寿司を食べ終えるだけで泣きそうになるほど満腹になるタイプなのに、その日は板前でさらに3貫を追加してしまった。もう十分お腹いっぱいなのに、それでも次の一口を楽しみにしてしまう——あの感覚は本当にリアルだった……

    三度目の訪問のあと、すぐにまた次の予約を入れた。毎回、「もともと好き」という前提の上で、さらに期待を超える体験を持ち帰ることになる。

    本間さんの料理には、あえて誇示するような「秘伝のレシピ」は見当たらない。彼のすごさは、むしろ食材選びと一皿一皿への掌握力にある——新潟の魚介の鮮度、香り、脂、甘みを、極限までバランスさせている。

    同時に、客に十分に心地よい食事体験を与えてくれる。

    「3月初旬ですか?酒の陣の週末は、もう本当に席が埋まっているんですよね……」

    「じゃあ、もう一日多く滞在すればいいか!」

    「実は強いお酒が好きなんです。ウイスキーも焼酎もどちらも好きで」「白酒はどうですか?」「白酒って水やソーダで割れないやつですよね……?あれで乾杯するのはさすがに強烈すぎませんか……」

    兄弟寿し

    新潟県新潟市中央区東堀通8番1427-2

    Monday – Saturday

    17:00~、20:00~

    Chef’s Menu ¥25,000++

    生意気な態度は表面だけ、中身は根っからの策士だ……