本当に予約が取れない寿司の名店|鮨 おばな

今年、群馬県には二度足を運んだが、ずっと予約が取れずにいた店があった。鮨おばな、群馬No.1の寿司店だ。多くの食通たちの間で、日本トップ3の寿司店の一つとも言われている。

現在の鮨おばなは、基本的に一般向けに席を開放しておらず、予約の電話も常連客しか受け付けていない。今回は三方からの力添えがあってようやくこの一食にありつけた。

距離的にも、東京から向かうにせよ群馬の高崎駅から向かうにせよ、鮨おばなのある館林市までは電車で1時間以上かかる。ちなみにここは、日本でも屈指の暑さで知られる街でもある。

改めて実感する。日本では、村や小さな町にこそ名店が生まれるのだと。

現在は二代目シェフ、尾花輝氏が店を受け継ぎ、もともとの街角の寿司屋から美しい寿司店へと生まれ変わらせた。2001年から、尾花さんは週に二度、自ら80キロの道のりを車で走り、東京・豊洲市場まで食材を選びに行っている。物流が発達した今でも、鮨おばなは常に群馬で一番早く冷蔵便の魚が届く店であり続けている。

マハタ

藁焼き鰹

以前、天ぷら もっこすについて書いた際に、天草の「満月塩」と「半月塩」に触れたことがあったが、今回着席するとまたこの組み合わせに出会った。皿の上には、それぞれの名前どおりの形に盛られていた。

組み合わせ方は好みに応じて調整できる。前者はより丸みがありミネラル感が強く、後者はクリーンでストレートな旨みの引き立て役だ。

個人的には石斑魚には半月塩、藁焼きの鰹には満月塩の方が特別な相性に感じた。鼻を突き抜けるような燻香がふっと消えたあとに、優しい食感の身が続き、旨みと余韻の甘さが細く長く続いていく。

シャコ

うにパフェ

アワビ

肝の裏ごし

おばなの酒肴は、シャコ・ウニ・アワビといった馴染みの食材でありながら、その作り方は完全に型を外れている。

シャコは雌雄二尾を食べ比べる仕立てで、左が雌・右が雄。シャコ味噌の濃厚さと、上にかけられたタレの甘みが鮮やかな対比を見せる。アワビは歯切れよく煮上げられ、旨みの凝縮度が非常に高い。肝も脇役にとどまらず、単独で柔らかく旨みたっぷりの酒肴として供された。

うにパフェはおばなの名物。豊洲市場を経由せず、港から直接店に届くバフンウニを、カクテルシェイカーでシェイクしてから舎利と混ぜ合わせる。わずかに芯を残した舎利に、甘み・塩気・旨み・たっぷりとしたミネラル感が絡み合い、この密かな贅沢の組み合わせに抗える人などいるだろうか。一口で幸せになれる一皿だ。

なかずみ(小肌が大きくなったもの、通称大肌(ブシ))

アサリ

太巻き

尾花さんが冷蔵庫から二本の美しい銀皮を取り出し、「今日は小肌の三世代共演をお見せしますよ」と。

成長しきった小肌は棒寿司に。身にはほのかな弾力があり、酸味と挟まれた生姜のバランスが絶妙だった。

続いて渡された太巻き——この断面の見事なマグロを見て、うっとりしない人がいるだろうか?「村」にある寿司店が、「群馬の寿司の大御所」としての仕入れ力をさりげなく見せつけてくる。

あん肝のポン酢漬け

ホッキ貝

17時30分に始まった夕食は、18時03分にはすでに10品目の酒肴に達していた。しかし尾花さんの酒肴の間合いの取り方が巧みで、慌ただしさはまったく感じさせない。

寿司が始まる前に、ポン酢に3日漬け込んだあん肝が供された。驚くほどチーズのような食感で、塩気と旨み、乳のような香りが優しくバランスよくまとまり、口に入れた瞬間にとろけていく。

イサキ

新子

小肌

十数品の酒肴を食べ終えて、ようやく寿司の出番がやってくる。

美しいイサキ、身はまだ透明感を保っている。脂のノリはちょうどよく、白身の味わいをより丸くまとめていた。

新子と小肌が続けて出され、銀皮が美しく輝いている。前者は柔らかく繊細な魚の味わい、後者はガツンとくるような高濃度の旨み。対比がはっきりとしていた。

いくら

いくらもおばなの名物のひとつ。食べる前は、アイスクリームのような食感のいくらなんて想像もつかなかった。従来のプチプチと弾けるイメージではなく、口の中でとろけていく旨み——本当に最高としか言いようがない。

続けて出てきた握りのインパクトが強かったので、尾花さんにお水をお願いしたところ、なんとハワイ産のミネラルウォーターが出てきた。

「うちではこれを飲んでるんですよ〜」

いや、根っからのサーファーだ。

赤身

マグロ(筋+中トロの境目)

大トロ

マグロ三貫、赤身は北海道噴火湾産、大トロは宮城県産。身の厚みがしっかりとあり、舎利に支えられて、それぞれの魚や部位ごとの風味と脂の違いがはっきりと表れていた。

驚かされたのは、尾花さんが出してきた「マグロの二部位盛り」——腹の筋と赤身の境目の部位だ。通常はこうした部位はミンチにされることが多いが、彼はあえて肉の厚みをそのまま残し、噛むたびのインパクトを最大限に引き出していた。二つの部位の食感と脂の香りが口の中で絶妙にバランスし、旨みと柔らかさ、そして余韻の甘さが続く。

障泥烏賊

大号キス

鬼鯵

ホッキ貝

銀皮とマグロの連続攻撃のあと、テンポが少し軽やかになっていく。それでもなお、おばなの仕入れ力は健在だった。

東京湾のキスだが、この一尾は通常見かけるものよりも大きい。初夏はまさに旬の時期で、身は肥えていながらも爽やかさを保っていた。

続く鬼鯵は、実は独立した魚種ではなく、超大型で脂ののったアジを指す通称だ。厚い一枚が舎利の上に乗り、身の弾力と脂の迫力がしっかりと伝わってくる。

甘エビ

貝割れ大根

焼き海老

煮蛤

甘エビもまた別格の一貫だった。外見は淡いピンクに輝くエビのすり身のようだが、中には丸ごと一尾の小さな甘エビが包まれている。柔らかさとシャキシャキ感を併せ持ち、甘みと旨みが驚きとともに新たな次元まで引き上げられていた。

続く焼き海老と煮蛤の間には、精進寿司が一貫挟まれていた。昆布締めにした貝割れ大根で、ほのかな苦みで口をリセットしつつ、昆布が旨みをつなぎ止める。魚は使われていないが、コース全体の8割ほどが進んだタイミングでのこの一貫が、頭をすっきりさせ、締めくくりへの準備を整えてくれた。

東市一号ウニ

黒糖のミルクプリン

東市一号、前回食べたのもやはり群馬県内のレストランでのことだった。群馬のトップクラスの店々は、料理のスタイルこそ違っても、食材選びにはどこか共通するものがある。

やはり本能的には、おばなではウニと舎利を寿司として合わせた形の方が好みだ。海の旨みと美しい甘さの組み合わせは、酒肴11品+寿司15貫を経てもなお、弾けるような幸福感を与えてくれる。

18時55分に食事は終了。電車で東京に戻っても、まだ20時を少し過ぎたところだった。5時間足らず、約30貫の料理で、地元の大御所の腕前を体感できた——効率よく満たされた一夜だった。

尾花さん本人としては、ごく少数の客に最高のサービスを届けたいという思いがある。だからこそ、この館林という小さな土地で、最高の魚を仕入れ、最高のコンディションで客をもてなすことに集中し続けている。

このダンディなおじさまには、いくつかのこだわりがある。たとえばサーフィンが大好きで、普通の人より何段階も日焼けしているのに、手だけは驚くほど白い。

「サーファーの手は焼けないんですか?」「意識してケアしてるんですよ。寿司職人たるもの、綺麗な手をしていないと、と思っていて」

「女将さんとの仲、いいですね」「いや、女房が怖いんですよ。逆らえません(笑)」

尾花さんの料理はまるで彼自身の小さな舞台のようだと言われる。特殊な立地、独自の料理スタイル、豪快と言っていい仕入れ、そして食えない(腹黒い)けれど面白い人柄。

「次はいつ予約できますか?」「一ヶ月後にまた聞いてください。私、1月はハワイにサーフィンしに行くので」

だから一度訪れた人は、きっとまた行きたくなるはずだ。来年、また会えることを願って。

鮨 おばな

群馬県館林市大手町5-1

火曜・水曜・木曜・金曜 17:30/19:30(二部制)

土曜 17:00 日曜 12:00/15:00(二部制)

祝日 12:00

おまかせ 27,500円/33,000円++

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