東京で高いお金を払って中華を食べることに抵抗があるのは、たぶん自分だけじゃないと思う。でも南青山「燦々」がオープンした時は、好奇心に勝てなかった。



上海の頭灶の新店舗+譚仕業シェフの弟子という組み合わせだけでも十分に目を引くが、最終的に心を動かされたのは、真剣に広東料理を研究している陝西出身の若いシェフだった。
(譚シェフの龍庭小飯桌について)
彼のメニューには、豪華なふかひれと紅ずわいがにの春巻き、腕前が試される小海鮮の炒め物、その場で手打ちするビャンビャン麺があり、血肉が通っていて、ある瞬間に中華の職人たちへの敬意がふと湧いてくる。
まず率直な感想から言うと、日本の友人や外国人の友人を連れて行くのにぴったりな、中華の心意気を感じさせる板前だ。



北海道つぶ貝×名古屋コーチン 風生水起

チャーシュー
ちょうど燦々が秋メニューに切り替わる初日に当たり、前菜は一品のみで、すぐに焼き物に移った。
北海道つぶ貝と名古屋コーチンで作った風生水起。揚げた里芋の細切りとみょうがを加えていて、確かに可もなく不可もない滑り出しで、強く印象に残るポイントはなかった。
チャーシューの味は明らかに調整されていて、漬け込みの香辛料をやめ、パパイヤなど果物を漬け味の主な源に変えていた。甘みが豊かで、印象にある日本の味わいにも近づいている。真ん中に挟まった透明感のある小さな脂身はカリッとしていて、かわいらしい。


食事中に一杯飲みたいと思ったが、燦々の現在のワインリストはまだシンプルで、相談したりおすすめを聞いたりできるスタッフもいなかった。結局、小さなワインカードから外れのなさそうな一本を選んだ。
お酒好きの友人たちは、次回はコルク料金を払って好きなボトルを持ち込むのも検討してみてもいいかもしれない。
この間、阿豪シェフはその日の料理に使う食材もみんなに見せてくれた。大きな紅ずわいがに2尾とふかひれを使い、その場で餡を炒め、揚げ春巻きの準備を進めていた。

北極貝の清炒め

帆立貝の牡蠣ソース
8秒で仕上げる清炒めは、譚シェフの龍庭小飯桌では象拔蚌(ホッキョクダイオウミミガイ)だったが、燦々の板前では日本産の北極貝に変わっていた。
一人ずつ取り分けるスタイルでは、鑊気(ウォクの香ばしさ)が少し損なわれてしまうものの、意外にも日本の食材が中華の調理法のもとで自分の強みを発揮していた。油に包まれた北極貝は、汁気のある歯切れの良さ、甘み、旨みを見せていた。
続く帆立貝も負けていない。譚シェフのやり方は油で揚げてから牡蠣ソースをかけるものだったと記憶しているが、阿豪シェフの手にかかると香ばしく焼く調理法に変わり、順徳伝統の卵白の炒めミルクが添えられていた。
パリッと甘い食感とふわふわのミルクの香りが出会う一皿は、日本の地元食材と広東の点心が結びついた見事な実例だった。

天麻とアカマダラハタのスープ


アカマダラハタと水菜
16斤(約8kg)のアカマダラハタを、二つの部分に分けて使っていた。
頭は天麻のスープに使われ、香りは蓋を開けた瞬間に集中していたが、味わいそのものは広東料理のスープに期待するような深みにはやや欠けていた。
胴の部分は軽く揚げ焼きにしてタレを絡め、水菜を添えていた。魚肉はふっくらとやわらかく、油通し後の香ばしさがあり、皮にはほのかなとろみがあって、さっぱりとした水菜の茎がそれを引き締めていた。上質な食材と精密な火入れが結びついた美味しさだった。

ニラと青唐辛子の蒸し物
華やかな食材の合間に差し込まれた、この野菜の一皿にまさか驚かされるとは思わなかった。
青唐辛子、ニラ、落花生油、そこに店自家製の醤油を少々。
青唐辛子はフレッシュな緑の香りと瑞々しい歯切れの良さを、ニラは個性の強い香りをもたらし、落花生油と醤油が味わいの六角形をしっかり支えていた。豪華な肉や魚介の間で、この一皿のシャキシャキした野菜は、はつらつとした足取りでテーブルに飛び込んできたかのようだった。
クリーンで、フレッシュで、シャキシャキしていて、香りの面でも一切引けを取らない。


山椒と玉ねぎ炒めの伊勢海老


唐辛子炒めのキス

ぶどうのグラニテ
国際舞台に押し出されるとき、四川料理と広東料理はまるでN極とS極のようにセットで語られがちで、それが中華の味の多様性を物語っている。燦々のこのメニューにも、日本の食材が料理のジャンルを横断するように表現される様子が見て取れた。
山椒と玉ねぎで炒めた伊勢海老と唐辛子炒めのキスは、板前に置かれた瞬間から香りが漂ってくる。ただ味わいの面では意見が分かれるところもあり、一人分ずつ取り分けるスタイルのもとでは、板前料理が口に入るまでの味と温度が、期待にはまだ少し届いていない印象だった。


ふかひれと紅ずわいがにの春巻き


和牛の酢豚風
食事も後半に差しかかり、その場で仕上げた春巻きがようやくテーブルに並んだ。
黄金色の小さな枕のような見た目で、切ってみると具がぎっしり詰まっている。外はカリッと、中はジューシーで、大きな春巻きならではのストレートな満足感がある。手間のかかる料理がその場で作られ、仕上がっていく様子を目にすると、どうしても余分な期待と愛着が湧いてくる。
ただ馬牛シェフが作った和牛の酢豚風は、最初のひと口こそ香ばしいものの、二口三口目には牛肉から溶け出す脂に押され気味になる。高脂質な肉と濃厚な甘酢ダレを重ねた結果、板前で食べるには飽和感が強すぎて、層の重なりがやや単調になっていた。

海鮮大根スープ


ビャンビャン麺

オリーブの実入り卵チャーハン
阿豪シェフは譚シェフの弟子として広東料理出身ではあるものの、このメニュー全体は広東料理一色というわけではなかった。
主食のパートでは、寝かせておいた麺生地が板前に並んだ。
手が動くたびに、麺がまな板の上で「パンッ、パンッ」と音を立てる。動きはきれいで、素早く、力強く、まるで試合をしているようなリズムがある。それが陝西の街角の生活感を、この板前にまで運んできていた。


老婆餅と豆花のアイス
オープンしたばかりの店として、龍庭小飯桌ほどの衝撃と比べるとまだ物足りなさはあるかもしれないが、この板前からはすでに中華料理人としての集中力と真剣さが伝わってくる。
日本の食材と中華の技法の融合は、それぞれの強みを引き出しており、火加減や手さばきといった「職人技」もお客の目の前に持ち出され、腕そのものがその場の体験の一部になっている。
この一食を食べ終えると、自然と「今度日本人の友人を連れて行きたい中華No.1」リストに入れたくなるはずだ。これは、東京の板前に立つ中国人シェフが、世界に向けて中華料理の魅力を見せる瞬間でもある。
一方で、板前というスタイルを選んだ以上、店はお客に一皿一皿ではなく、完成された一つの食事体験全体を提供する必要がある。現状では、一部の熱菜の温度が万全ではなく、ワインリストの選択肢も限られていて、板前でのやり取りもまだ十分とは言えない。東京の成熟した名店と比べると、こうした弱点は体験全体の中でより目立ってしまう。
「東京の板前中華」の頂点に向けて、一歩一歩近づいていくことを期待したい。
南青山 燦々
東京都港区南青山7-14-6 本間ビル 4F
月曜日〜日曜日 18:00〜
Chef’s Menu 30,000円++

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