秋田|新年の旅の願い事は、雪国から

秋田は本当に、おとぎ話から抜け出てきたような場所だった。

吹雪の中で灯りをともす居酒屋があり、鉄板にのって出てくる新鮮なホルモンがあり、湯気の立つ鍋で比内地鶏が煮え、静かな町にはふっくらとした寿司職人がいて、そしてどの店に入ってもほぼ必ず出会う、スーツ姿でグラスを傾ける客たち。さらには背筋をぴんと伸ばして座る、行儀のいい可愛らしい🐶秋田犬。本当に個性的で、独特の”人気感”のある場所だった。

地元が誇る”三美”とは、美酒、美人、そして美味。実際に秋田を訪れてはじめて分かる。これは単なるスローガンではなく、秋田の食卓を貫く自信そのものだった。

吹雪のさなかに秋田を訪れて気づいたのは、この雪国の”美味しい・楽しい”は単発の名物ではなく、ひとつながりのコンボだということ。

銀賞の寿司の板前から、隠れた名店の焼き鳥、煙と熱気にまみれたホルモン焼き。新政や十四代を驚くほど安く飲める居酒屋から、笑いの絶えない中華料理居酒屋、そして秋田人だけが知る”三軒目”の秘密の店まで。昼は雪を眺め、夜は酒を飲む——旅程は熱気と香りに押されるように進んでいった。

秋田での食べ方、飲み方、遊び方。レストラン4軒、居酒屋5軒、そして旅程を埋め尽くすとっておきの場所たち——このまま真似できる秋田攻略を、そのままお届けする。

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🍣 鮨駒

👨‍🍳 東北の魚を🥈銀賞店の域まで昇華させる、錬金術師のような料理人

🍣 秋田県由利本荘市桶屋町120

鮨駒は今回の秋田旅で最も遠い一軒であり、同時に吹雪のシーズンにあえて東北の奥地へ踏み込もうと決めた、そもそもの出発点でもあった。

食べログ三年連続🥈銀賞店でありながら、ランチはなんと8,800円。

大雪の中、電車で海沿いを走り羽後本荘駅へ。そこから徒歩20分で店に着く。ごく普通の日本の小さな町だが、大将の生駒憲正さんは”もっと多くの人に故郷へ来てほしい”という思いを胸に、銀座やニューヨークでの修行を経て、故郷に戻ってこの店を開いた。

大都市の店と違うのは、鮨駒の魚の仕入れと保存方法がより原始的でありながら、仕事の仕方はルールを軽々と超えていくところ。

漁船が港に着く前に電話がかかってきて、大将は直接港へ魚を買いに行く。宮城県南三陸にも定期的に足を運び、時には船に乗り込んで手伝うことも。冬は天然の雪を使って魚を保存し、”凍る一歩手前”の安定した低温で熟成させる。

まさに”東北人”だけの、魚の扱い方だった。

寿司のスタイルとしては、大将は江戸前の伝統技術を受け継ぎながらも型にはまらず、むしろ自身のオリジナリティを一貫一貫に明確に込めている。

例えばフグに大根おろしと白子ソースを合わせた一貫は、噛みごたえが強く、噛むほどに繊維の奥からひんやりとした旨みが立ち上がる。大根おろしが味を明るくし、白子ソースの柔らかさが旨みを口の中に広げていく、硬派でありながら豊かな一貫。

太刀魚、穴子、石斑魚(ハタ)は多くが軽く炙って半生に。火入れが脂の香りを引き出しつつ、中心は柔らかさや弾力を残し、さらに植物由来の粉末や新鮮な小ねぎで味を重ね、噛むほどに表情が変わっていく面白さがある。

サワラは藁で燻製に。もともと柔らかい身に、燻香が細い糸のようにそっと絡みつく。決して強くはないが、確実に記憶に残る。

白甘鯛はまず塩で軽く脱水し、揚げた鱗と葱を添えて。口に入れるとねっとりとした旨みが、締まった質感のまま舌に張り付くように広がり、次の瞬間には鱗の香ばしい食感がそれを持ち上げる。柔らかさと軽やかな食感が同時に走り、旨みがより立体的になる。

カジキマグロは別の方向性。玉ねぎのピューレが質感を滑らかに整え、シーホースソイソースが美しい酸味を添え、後半には特徴的な海藻の香りがふわりと立ち上る。爽やかで澄んでいながら、決して淡白ではない。

しかし、いちばんの絶品といえば間違いなくあの鯖の巻物。すぎたが銀皮を”鮮度とバランス”の極致に仕上げるとしたら、鮨駒のこの一品は、柔らかさと香りをめぐる爆弾のような料理だ。

板前で”ジュッ、ジュッ”と小気味よく二度、炙りの音が空気を一気に盛り上げる。まず白ご飯にごま、細ねぎ、紫蘇を混ぜて握り固め、その上に大きな鯖の切り身を二枚重ねて、独特な形に仕上げる。

見た目からしてすでに十分なインパクトがあり、口に入れた瞬間の衝撃はさらに直接的。柔らかな身、濃厚な魚の香り、表面から中まで染み込む炙りの香ばしさ——一度見たら忘れられない一品。

食事全体の記憶に残る瞬間は、波のように何度も重なって押し寄せてきた。今、写真を見返しても、多くの味がすぐに舌の上に蘇ってくる。

冒頭のクリームプディングのようになめらかで甘い自家製豆腐、クリームのような炙り白子、信じられないほどコリコリの大サザエ、紅雪ガニの上にのった濃厚なカニ味噌ソース、笹の葉で煮た穴子の澄んだ香り、そして最後の甘い薄揚げの巻物にのった干瓢の優しい甘さ。

次回の予約を尋ねると、大将は大きなカレンダーを取り出し、一つひとつ確認しながら探してくれた。ふと、可愛らしいと思った。

実直で、個性があり、その土地らしさもある美味しさ。遠いけれど、また訪れる価値のある一軒。

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🐓 鳥好

👨‍🍳 比内地鶏の美味しさを、正面から

🍣 秋田県秋田市中通4-11-5 栄ビル 1F

秋田に来たなら、比内地鶏は絶対に外せない。秋田を代表する地鶏として全国の料理店でも存在感が高く、噛みごたえ、脂の香り、旨みのどれもが際立つ。

だが多くの旅行ガイドが薦める鶏鍋よりも、地元で比内地鶏の焼き鳥を食べる方が、実際にはずっと魅力的だと思う。

鳥好の大将は、大塚の「蒼天」、その後湯島の「鳥恵」で修行を積み、最後に秋田に戻って独立してこの店を開いた。

新政の在庫量の多さを売りにするもう一軒の焼き鳥店と比べると、こちらはお客にきちんと食事を楽しんでもらおうという純粋さが際立つ。

シンプルで、温かく、美味しい——それが私にとって最も的確な形容。この日は比内地鶏だけのコースを頼んだが、串と串の間でその性格の違いをより明確に感じ取ることができた。同じ鶏でありながら、食感と香りの層をいくつにも分解し、一串ごとに比内地鶏の個性をくっきりと描き出していく。

つくねには比内地鶏の親鶏を使用。口に入れるとしっかりとした力強い質感で、まるで”体育会系”のような筋肉的な噛みごたえ。噛み進めるうちに中に潜んだ山椒のニュアンスがじわりと現れ、厚みだけでなく味わいの深さもある。

鶏肩肉には玉ねぎソースを添えて。皮は香ばしく焼き上がり、脂は甘みを引き立てられ、玉ねぎの爽やかな甘さが全体を明るく引き締める。

鶏もも肉のねぎ巻きはお馴染みの組み合わせながら、非常に独特な仕上がり。薄く伸ばした鶏皮でねぎを一本まるごと包む。薄い皮、締まった肉、甘いねぎ、そこに確かな燻香が加わり、一口でとても満足感がある。

胸肉も特別な一品。黄金色の皮の下に紫蘇を挟み、しかも二切れがそれぞれ異なる部位から取られていて、あえて並べて対比させている。肉は半生の状態を保ち、異なる締まり具合と層の変化を味わえ、繊細でありながら面白い一串。

最後の親子丼も、忘れられないほど美味しい。とろけるような白身、とろりとした黄身、締まった鶏肉、そして卵液に包まれたふっくらとした秋田米。一口食べれば、抗いようがない。

本当に美味しくて、温かく、少し可愛らしさもある宝物のような小さな店。コースはいくつか種類があり、自分の食欲に合わせて選べる。酒もほぼすべて秋田の地酒で、選んでハズレることはまずなく、むしろ料理の脂を甘く美しく引き立ててくれる。

隣の席のお客さんが店主に一杯おごっていた。

「一杯どうぞ、私たちはちょっとタバコを吸ってきます」「じゃあお先にいただきますね」「あなたが飲み終わる前に戻ってきますから」

この肩の力の抜けたやり取りこそ、秋田人の骨の髄に染み込んだ、酒を愛し、自由に構える気質なのだと思う。

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🔥 ほるもん猿

🐷 ホルモン焼きの良さは、十分な新鮮さを味わってはじめて分かる!

🔥 秋田県秋田市中通り6-12-13

寿司も焼き鳥も済ませたなら、焼肉も外せない。国内旅行のときの感覚とよく似ていて、小さな町の食材はより産地に近く、特にこの手の「ホルモン」は、新鮮さのレベルがまったく違う。

秋田では豚ホルモン焼きの店を一軒予約した。吹雪の中扉を開けると、熱気が顔にぶつかってくる。艶やかなピンク色のホルモンをそのまま炭火に放り込み、脂がぽたぽたと網を伝って落ちていくのを眺める。空気中には香ばしい匂いが漂う。そこに秋田米のご飯とハイボールを添えれば、あとはただ純粋で直接的な幸せだけが残る。

本当に爽快だった。

せっかく来たのだから、店の看板部位は一つも欠かせない。六部位が二枚の鉄皿に盛られてそのまま登場。ハツ、コブクロ、レバー、ホルモン、ナンコツ、そしてタン。

コブクロは一本ずつ網に放られ、火花の中でゆっくりと縮んでいく。口に入れるとすっきりとした歯切れの良さがあり、噛むほどに香りが増す。ハツは肉感が強く、コリコリとした食感に弾力も加わる。ホルモンは一番忍耐が試される部位で、じっくりと縁がふつふつするまで焼く。口に入れて初めて、その待ち時間が報われたと分かる——驚くほどクリーミーで、脂の甘さも控えめで上品。

レバーは大胆に半生で口に運ぶ。想像以上の甘みと歯切れの良さが得られ、臭みはまったくない。

こう比べてみると、普段人気のナンコツやタンがむしろ地味に感じられるほど。人はやはり”野趣”のあるものに惹かれるらしい。これほど新鮮なホルモンを前にしたら、もう普通の肉どころではない。

これほどコレステロールの高い一食を食べ終えても、まったくくどさが残らないのが不思議だった。記憶に残るのは炭火が立ちのぼる熱気と、大都市ではなかなか出会えない部位ごとの新鮮さ、そして甘さ・柔らかさ・歯切れの良さが層になって広がっていく食感だけ。

口を拭いて席を立ち、次の店へ向かう。注文のときのあのやり取りをまだ覚えている。

「この量で足りますか?」「一軒目ならまったく問題ないですよ」

やっぱり、秋田の夜はもう一軒、もう一軒と長居したくなる。名残惜しい分は、次回にとっておこう。

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🍣 鮨いとう

👨‍🍳 寿司のもうひとつの次元は、まさかのリゾットのもうひとつの次元でもあった

🇮🇹 秋田県秋田市山王1-2-13 トゥエンティワンビル 503

秋田の日曜の夜、しかもちょうど吹雪。ほとんどの店がすでに休みに入っていた。だが一軒だけ、不思議な”洋食店”の灯りがついていた。

去年開業したばかりの新しい店。主厨は東京のイタリアンやフレンチで修行を積み、最後は故郷に戻って”鮨”の看板を掲げる小さな店を開いた。私にとってそれは、寿司を外皮としながら、個人的なスタイルを表現する魚と米の料理店のように感じられた。

料理から酒の組み合わせまで、すべて主厨一人の手による。

「うちの酒は高くないので、たくさん飲んでも大丈夫ですよ」

秋田人ならではのこの心遣いには、ほとんど抗えない。さらに意外だったのは、地元酒にこだわらず、日本各地から選りすぐった日本酒をペアリングに用いていたこと。もともと気ままだったこの晩ご飯に、自由に流れるような驚きが加わった。

この食事の本当の面白さは、料理の端々に主厨の細やかで、しかし迷いのないアイデアがはっきりと感じられるところにある。

例えばセロリのソテーに酢飯とヤギチーズを合わせた一皿。一見まったく関係のない三者が、まったく新しい味覚の論理を作り出す。最初の一口は不思議だが、そこからじわじわとクセになる。

秋田人が誇る漬け大根は千枚重ねに仕立てられ、クリーミーな柔らかさと爽やかな歯ざわりが交互に現れ、燻香の中から美しい酸味が立ち上がる——思わず、もう一杯飲みたくなるタイプの一皿。

ひろこ、からすみ、パン粉、焼きレンコン——地方食材と洋食の構造的なロジックが組み直され、最終的には茴香餃子に近い香りの輪郭が現れる。温かみがあり、立体的で、とても好感度が高い。

テクニックをひけらかす料理ではなく、忍耐と絶妙な塩梅を持った組み合わせの実験のような一皿だった。

鱈子のジュレは、その晩のベストの一つだったと思う。高濃度の旨みが口の中に広がった後、わずかな痺れが軽やかに顔を出す——非常に控えめでありながら、強く印象に残る。食べ終えて残るのはただ一つ、「持ち帰ってつまみにしたい」という思いだけ。

寿司パートは小さなアイデアに満ちている。

ニシンは麹味噌で漬け込み、まず一口そのまま、それから自分でシャリと合わせる——苦もなく成立するバーフードのような一貫で、素直に美味しい。続く小肌の一貫は、意外にも”口直し”の役割を担う。

牡丹海老と蟹を合わせた一貫は、二種類の旨みが重なり合い、視界に飛び込んでくるような満足感がある。太刀魚の豊かな脂がシャリにのると、頭の中で瞬時にリゾットのあの濃厚でなめらかな質感を連想させた。

本当に楽しい小さな店。寿司という名前と見た目を掲げながら、伝統的な意味でのそれとはまったく異なる味とスタイル。

「正統」を強調するでもなく、特定のラベルにこだわるでもなく、魚と米で自分自身の表現を作り上げている。アイデアは豊富だが、わざとらしさはない。テンポは軽やかだが、決して手を抜いていない。

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🏮 永楽食堂

🥢 日本全国の居酒屋の中でも、神店の域に数えられる一軒

🍶 秋田県秋田市中通4-14-33

秋田を訪れるすべての大人にとって、永楽食堂は必ず立ち寄るべき一軒。料理は美味しく、酒は安い——これ以上の理由が他にあるだろうか?

永楽の一軒目は予約が必要で、二軒目はそのまま並んで入る。店内を見渡せば、仕事帰りでスーツ姿の地元客や、二軒目ですでにほろ酔いの人々が、料理を二皿頼んで一杯やっている。

酒のラインナップの幅広さといったら、産地別に分類されて壁一面に貼られているほど。新政No.6は一杯30円台の明朗会計、十四代でも80円台。ハイボールやビールを飲んでいる人も少なくない。

日本ではいわゆる”コスパ最強”の日本酒バーを数え切れないほど巡ってきたが、永楽食堂に来るとまた別次元の衝撃を受ける。

これこそ、秋田人が酒を愛する自信の源なのだろう。まさに神仙食堂と呼ぶにふさわしい一軒。

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🏮 コンカドール

🍶 会員制の日本酒バーで、秋田”ママ”のかっこいい冷蔵庫を開ける

🥂 秋田県秋田市山王1-7-20 栄憲ビル 2F

秋田にいると、酒を水のように飲んでいるような錯覚に陥る。さらに恐ろしいのは、そこで飲んでいるのがどれも良い酒だということ。”ママ”の小さなバーはその典型例だった。

冷蔵庫には可愛い雲のイラストで囲まれた文字が貼られている——「2.5時間飲み放題 4,500円」。この値段は東京なら、高級料理店でミネラルウォーターを飲むのにも足りないかもしれない。

“新政が多い”というのはもちろんこの店に惹かれる理由の一つだが、本当に人を引き留めるのは、あの一列に並んだクセの強い、個性豊かなセレクション。飛良泉、一白水成、春霞……爽やかなものから濃醇なものまで、あらゆるタイプが”ママ”の冷蔵庫の中に見つかる。

秋田の地元客と日本全国からの客の両方を惹きつけているのは、酒そのものよりも、この場の空気なのだと思う。

空間は十分にプライベートで落ち着いており、”ママ”の快活で外向的な性格と、やや静かな空間との間に絶妙なギャップが生まれている。数日前に15周年を迎えたばかりで、店内には秋田の各酒類団体からのお祝いステッカーが貼られている。それは誇示することのない、確かな地位と実力の証だった。

さらに、SOUR Pandaを注文すると、”ママ”は笑いながらふわふわのパンダ帽子を取り出して一緒に写真を撮ってくれる。可愛らしく、気ままで、人情味にあふれている。

ちなみに、酒がメインの店ではあるものの、ちょっとした料理も決して手を抜いていない。おつまみはシンプルながら、しっかりと美味しく、秋田の夜の一軒目にぴったりの店だった。

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🥢 Asiagura

🏮 五十歳、秋田”美人”が営む中華料理の神仙居酒屋

🍣 秋田県秋田市中通6丁目19-7

秋田で最も宝物のような一軒を挙げるなら、間違いなくAsiaguraだろう。アジアンミックス風の小さなバーで、頭を完全に空っぽにして、心底リラックスしながら飲める場所。

照明はやや暗め、異国情緒あふれる内装は控えめながらも雰囲気がある。背景にはどこか懐かしい音楽が流れ、投影機には古い映画の映像が流れ続け、若かりし頃の木村拓哉まで登場する。時間の流れがゆっくりになったように感じられる。

階段下の小さな黒板には秋田の地酒がずらりと並び、その中に十四代、仙禽、写楽といった全国区の銘柄も混じっている。焼酎は1.8L瓶がそのままカウンターに並べられ、迫力満点。

だが会場でいちばん目を引くのは、頭上の黒板に書かれた四文字——「月見麻婆」。50歳、東京体育大学サッカー部出身というイケメン店主に、中華料理出身のシェフという組み合わせ、これは納得せざるを得ない。

店の中のすべてが、あまりセオリー通りではない。すっかりリラックスしきった私たちも、予想外の選択をし始めた。

看板の麻婆は頼まず、隣のテーブルの香りに誘われて油淋鶏を注文。日本酒は一口も飲まず、見たことのない焼酎の列に惹かれ、二晩かけてほぼ全種類を試してしまった。

店主はどの酒にも自分なりの飲み方の提案を持っている。あるときはソーダ割り、あるときは水割り、あるときはロック一杯とストレート一杯、それに水を添えて、飲み比べさせてくれる。料理にも自信満々。「うちのニラレバ炒めは、食べログの人気店にも負けませんよ」

一度行けば、ずっと心に残る、肩の力の抜けた小さな店。警戒心を解いて、楽しく乾杯を。

✦ 🍺 ✦

🍺 JAH

🍜 飲みと〆のラーメン、両方を一軒で

🍣 秋田県秋田市大町5-3-16 1BOXビル2F

秋田では、店に新政が置いてあるのが、青島の食堂にビールがあるのと同じくらい当たり前のこと。そして秋田の夜の老舗スポットの一つであるJAHの酒リストは、さらに幅広い。日本酒、スピリッツ、カクテル、リキュール、梅酒——ページをめくってもめくっても続く選択肢に、目移りしてしまうほど。

セレクションは幅広いのに精度も高く、スタッフ全員がプロフェッショナルと呼べるレベル。カウンターのバーテンダーと少し話すだけで、酒の背景やスタイル、飲み方までよどみなく語ってくれる。その酒への親しみ方は、暗記したセリフというより、すでに生活に染み込んだ常識のようだった。

酒の実力だけでなく、JAHの深夜ラーメンも有名。秋田で「飲んだ後にラーメンが食べたい」と言えば、ほぼ確実にJAHを勧められるほどだ。

次は私も試してみたい!

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🍹 サイドバック

👗 秋田版、新宿二丁目

🍣 秋田県秋田市大町4-2-4 2F

SIDEBACKは間違いなく秋田のもうひとつの世界でありながら、地元の人も本気で薦めてくれる場所でもある。

秋田で「どこに行ったの」という話になったとき、「一昨日SIDEBACKに行った」と言うだけで、ほぼ必ず意味深な「おぉ、それ行ったんだ。」という反応が返ってくる。その言い方には少しの驚きと、地元民ならではの共感が滲んでいた。

偶然にも、その夜のSIDEBACKは私たちにとって三軒目で、そこで最初の店で出会った人たち全員と再会した。中国、東京、秋田、北海道から来た人々が、雪の夜に二度も顔を合わせ、最後には一つのテーブルに集まって盛り上がり、九月にまた会おうと約束までしていた。

これこそ秋田で酒を飲むことの不思議さなのだと思う。人と人との距離は、グラスを重ねるたびに、本当にぐっと縮まっていく。

SIDEBACKは実際、怖がらずに目を閉じて扉を開けてしまえば、きっと好きになるタイプの店。二階の赤い光の中、男性オーナーはストライプのスカートに赤い口紅で、少し”妖艶”でありながら、安心できる親しみやすさも持ち合わせている。

まもなく周年を迎えるこの店で、彼は棚の中の宝物を見せてくれた。

「これは新政が私のために特別に造ってくれた濁り酒、”独角獣(ユニコーン)”です」

「2月13日が十周年、もし来てくれるなら……一口取っておきますよ」

必ずまた訪れたい。

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食べる飲むは書き終えたので、最後に秋田での過ごし方を簡単に。ホテルは駅前がおすすめで選択肢も多く、移動もしやすく飲みに行くのにも便利。今回はANAのホテルに宿泊したが、金曜の午後には秋田の酒や食にまつわるミニポップアップも開催されていて、無料の試飲・試食が用意されていた。

秋田に来たら、酒蔵は絶対に訪れたい。新政酒造は一般公開の見学はしていないが、グッズは購入でき、酒は一人二本までの限定販売。秋田駅からバスで行けるので、ぶらりと立ち寄る価値は十分にある。

本格的に酒蔵の内部に入りたいなら、地元を代表する酒蔵・高清水が自然とその役割を担ってくれる。じっくりとした見学ができ、英語での案内まであり、平日は4時まで開いている。事前に電話予約すればOK。

木樽や古い道具、黄ばんだ帳簿やラベルといった古い品々の展示の中に、秋田の日本酒の歴史が少しずつ浮かび上がってくる。

「この道具は、昔、遠足に出かける人にお酒を届けるための専用品だったんです」——なるほど、骨の髄まで染み込んだ美酒の王国だ。

新政酒造

高清水酒造

週末に秋田を訪れるなら、秋田犬も絶対に見ておきたい。遠く秋田犬の里まで行かなくても、市内の秋田犬ステーションでは週末15時まで秋田犬の展示が行われている。丸くとぼけた顔がショーウィンドウの中に静かにちょこんと座り、人畜無害な優しい存在感を放っている。雪国のマスコットの名は伊達ではない。

時間に余裕があれば、個人的には大森山動物園を強くおすすめしたい。日本各地の動物園や水族館を訪れてきたが、ここは間違いなく最も個性的なスタイルの一つ。案内板はすべて動物のお尻の形をしていて、アライグマはハート型の雪の巣穴にくるまってリンゴをかじり、ゴリラはミッキーマウス柄の毛布を羽織り、人気者のユキヒョウは高い場所からエレガントに周囲を見渡している。

興味のある方は事前に公式サイトを覗いてみるのもいい。どの動物にも一枚ずつ独立した”IDフォト”があり、それぞれに強烈な個性がある。白い世界の中の、また別の可愛さと言えるだろう。

秋田はやっぱりいい場所だ〜。冬は雪を見に、夏は避暑に、また来よう。

鮨駒 · 鳥好 · ほるもん猿 · 鮨いとう

永楽食堂 · コンカドール · Asiagura · JAH · サイドバック

秋田県秋田市 / 由利本荘市

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