鹿児島旅行のそもそもの始まりは、地元の人が「神店」と呼ぶ店の予約が取れたことでした。
食べログで県内第一位のシルバー賞を獲得し、すべての受賞盾をトイレに飾っている店。そして、カウンターで魚と料理への理解を、まったく包み隠さず表現するシェフの店。
「その魚は美味しくないよ、こっちを試してみて」「車海老はもちろん熱々じゃないと美味しくない。苦手だっていう人は、みんな冷めたものを出されているだけなんです」
けれど食べ終わる頃には、心から納得させられてしまいます。鹿児島の地元の魚と、彼のこだわりは、それだけの誇りに値するものでした。


1989年に開業した「鮨匠 のむら」は、今や37年の歴史を持つ店になりました。
ずっと地元の実力派として知られ、食べログアワードの10周年クラブ(アワード創設以来10回連続で受賞している店)のメンバーでもあります。同じ栄誉を持つ他の7軒の寿司店は、寿司好きの間では「神店」クラスとしてよく知られていて、天本、あらい、すぎた、さいとう、さわ田、三谷、近松が含まれます。
本当に個性があり、わざわざ足を運ぶ価値のある店です。地元の生産者や漁獲への理解をもとに、普通の寿司店とは違うロジックで、それぞれの食材を最良の状態で提供してくれます。乾杯のときには「飲むなら のむら!」という掛け声を叫ぶのがお約束。
野村伸治シェフがやっているのは、いわば独自の「鹿児島前」だと言えるでしょう。


お通しの段階から、すでに十分な個性があります。目の前には調味料がずらりと並び、自家製の白味噌、自家製の醤油、自家製のポン酢、からしを合わせた梅肉ダレ、そしてごまを混ぜた海塩まで。そのあとに出てくる刺身は、すべて客が自分でこれらの調味料と組み合わせて楽しめます。
市場を経由していない鯛は、皿に上がってもなお美しい透明感を保っています。「味噌さえ使わなければ何でもいいですよ。個人的にはポン酢が好きですが、塩だけでも試してみてください」。不思議なのは、彼が出すどのタレも、味を重ねるためのものではないということ。そうではなく、そのつど違う角度から魚の鮮度や甘み、魚らしさを引き出し、ひとつの魚の切り身に対する認識を、組み合わせごとに新しくしてくれます。


たとえば鯛に梅肉わさびを合わせると一気に立体感が出て、タコに塩を合わせると噛むほどに澄んだ甘みがじわじわと広がり、小アジに味噌を合わせると刺激的な酸味が旨みと脂のバランスをちょうどよく引き立て、一日熟成させた地元のカンパチは、脂の乗ったポン酢に支えられて、さっぱりとしながらも柔らかい味わいになります。
「うちの店にあるのは天然の食材だけですよ。私自身も天然なんです!」
のむらの板前では、とても特別な食材を味わうことができます。日本南部ならではの特産品もあれば、生息する海域の違いによって、よく知られた魚種の風味や形が地元ならではの個性を持つようになったものもあります。


キビナゴは、丁香魚に似た魚で、ちょうど子持ちの季節でした。炙ることで、背びれ側の脂とその鮮度がどちらも際立ち、柔らかくふっくらとして風味も豊か。ミニサイズの太刀魚のようで、骨があることでかえって食べるほどに味わい深くなっていきます。
地元の紫うには、旬の期間がわずか1か月しかありません。茶碗蒸し、餅、タコの足と一緒に供されます。「うちのウニは、みょうばんで固めていませんよ」。ウニ自体の風味は濃厚で、純粋に美味しく、それだけで十分に特別です。


寿司というのは本当に、新鮮で地元ならではの食材をベースに、熟練した包丁さばきで美しさを何層にも重ねていくものです。
鹿児島産のアオリイカは、衝撃的なほどの柔らかさ。鹿児島産の「東星斑」(スジアラ)は、魚の味わいがとても澄んでいます。旬を迎えたイサキは、シャリに支えられていっそう甘くやわらかく感じられます。地元でしか獲れないナミクダヒゲエビ(大型のシャコの一種)は、パリッとした食感の中に濃縮された甘みのある海老の旨みが凝縮されています。さらに、湯気を立てたまま板前に運ばれる車海老、天然のシマアジ、2メートルもある地元の太刀魚まで……。
一貫一貫にそれぞれ特別な記憶点があり、食べ進めるほどに幸福感が幾層にも積み重なっていきます。


食事全体を振り返ると、実に7割の魚が、ほんの1〜2か月だけのベストシーズンにちょうど当たっていました。地元食材の「最高の漁獲、最高の状態」を知り尽くしていることが強く伝わってきます。野村さんの頭の中には、四季それぞれの調理法に合う鹿児島の魚が、一体何種類入っているのか、本当に見当もつきません。
極めて丁寧で的確な調理と選択でありながら、超がつくほど楽しい板前の雰囲気の中で客に体験させてくれる——まさに鹿児島らしさと風土がぎゅっと詰まった体験でした。
飲むなら のむら!
また次回、会えるのを楽しみにしています。
鮨匠 のむら
月曜〜土曜 19:00
シェフズメニュー 50,000円(お酒込み)

コメントを残す