鳥米 京都|嵐山の麓に佇む百年の老舗と、至高の鶏油湯葉

京都の旅程の中で、嵐山は景色を見逃せない一站だ。山があり、水があり、庭園がある。秋に紅葉が色づく季節は、数え切れないほどの旅行者がわざわざ訪れる景色でもある。

そのすぐそばに701年に創建された松尾大社があり、今ではすでに1300年以上の歴史を持つ。境内には亀の井の霊泉があり、水と醸造をめぐる独自の信仰の伝統が形作られていて、日本全国の清酒蔵元たちが特に重んじ、長く篤く崇敬してきた重要な古社でもある

京都のいくつかの古社が「壮大な歴史感」に寄っているとすれば、松尾大社はむしろ清酒とともに呼吸し育ってきた、街の脈々とした流れを貫く老舗の名社に近い。

「鳥米」は松尾大社の門前に店を構え、1888年の創業から現在まで六代目に受け継がれてきた京懐石料理店だ。

まるで、この由緒ある山の麓の宝地に店を構えたような感覚だ。

もともとは、松尾大社を参拝した後の蔵元たちがひと息つくための鶏鍋屋として始まり、看板は比較的「ストレート」で満足感のある鶏料理だった。時代とともに少しずつ進化を重ね、六代目の跡継ぎである田中良典氏のもとで、正式に鶏肉をベースにした京懐石料理へと生まれ変わった。

端的に言えば、「京都の老舗が現代化していく」王道のストーリーだ。

田中良典氏の考えでは、京料理が2022年に無形文化遺産として登録されたことを背景に、京料理は絶えず変化を続け、新しい技術を学び続けることを前提として、その歴史を宿した精神を受け継いでいくべきだという。

そのため店では、器や漆器、空間、食材、料理といった伝統に由来する五感の美学を守りながら表現の仕方、調理法、組み合わせにおいては現代的な要素を取り入れている。

例えば全国各地の清酒、さらには自家調合の酒を料理に合わせたり、刺身にからすみをまとわせたり、湯葉と鶏油の組み合わせで茶碗蒸しの代わりを表現したりといった具合だ。

食事の始まりから、ちょっとした驚きがあった。鶏鍋から始まった料理店なのに、八寸がきっちりと整えられている。葉の下に隠れた鶏肉のつくねは、ふんわりとした柔らかさで実力を証明し、番茶漬け鮎はふくよかさの中に優雅さがあり、筋子に大根おろしを添えたものは格別に爽やかで、さらに鯖の押し寿司もちょうどよいバランスだった。

合わせた酒は、なんと京都地元の蔵元・金鵄正宗の原酒を自家の木樽で25日間熟成させたものだった。ちょうどよい木の香りとミルキーさが際立っていて、八寸のどの一品とも実によく合っていた。

晩秋から初冬にかけての向付には寒鰤烏賊が選ばれていたが、どちらにもそれぞれの工夫がある。前者は今の時期はまだ脂が十分に乗っていないことを考慮して1週間熟成させ、身の柔らかさで脂をより優しく感じさせている。後者は薄くからすみをまとわせていて、熟成の旨味が柔らかな甘みを包み込み、酒の肴として絶品だった。

合わせた酒には「梵」純米55を使用。米の旨味がクリーンで、脂の香りと海の塩気・旨味をより立体的に引き立てていた。

鶏油と湯葉の組み合わせは、「絶品」の一言に尽きる。

黄金色に輝く鶏油の下にあるのは、京湯葉「ゆば庄」の特別な湯葉だ。口に入れると、チーズにも似たわずかな糸引きと豊潤さがありながら、重くはなく、むしろ澄んでクリーンだ。温かさが大豆の香りをゆっくりと開かせ、鶏油がさらに深い旨味と甘みを引き出し、余韻にはほんのりとした回甘が残る。

騒がしくはないのに、食べれば食べるほど納得させられる——そんな「京都らしい静かな美味しさ」だ。

ここに合わせたのは石川県「竹葉」秋酒で、その円熟感とやわらかな米の旨味が、鶏油の豊かさをちょうど受け止めてくれる。同時に酸味とキレのある後味が、湯葉の大豆の香りと回甘をより爽やかに引き立てる。

酒選びのセンスが実に鋭く、相性も満点——また一つ、脱帽させられた。

焼き物には鴨の炙り焼きが登場。皮の色を見ただけで期待が高まり、美しい燻香が漂ってくる。肉質にはわずかな野性的な張りがありながらも粗さはなく、かすかな甘みが輪郭を引き締め、料理全体を抑制の効いたバランスに見せている。噛むほどに層が現れ、風味は一気に弾けるのではなく、ゆっくりと広がる余熱のように、じわじわとにじみ出てくる。

合わせたのは金鵄正宗の「藤袴」。インパクト重視の路線ではなく、柔らかく寄り添うような支え方をする——まるで着物と帯のように、一方が輪郭を引き締め、もう一方が気韻を補い、互いを引き立て合っている。

この店の原点である鶏鍋は、一杯の鶏スープから始まる。自家飼育の鶏の頭と脚でとったスープは、ミルキーさに加えてほのかなとろみもある。合わせて燗をつけた金鵄正宗の「銀閣」が出され、女将から少しスープに垂らしてみてはと勧められた。旨みと香りが重なり合い、味わいがより豊かになった。

鍋で煮る豆腐には嵯峨豆腐の老舗「森嘉」の絹豆腐が使われていて、口の中でふわりと軽やかでありながら、香りは少しも損なわれていない。

鶏肉を鍋できれいに食べ終える頃、ちょうど釜飯も蒸し上がる。

女将が鍋の底を再び煮立たせ、まず白飯をスープの中に移し、しゃもじの背でそっとほぐしていく。そのあとテキパキと溶き卵を用意し、鍋の縁に沿って2〜3回に分けて細く流し入れる。卵がふわりと広がるにつれ、スープの表面は乳白色から柔らかな金色へと変わっていく。再び蓋を開けたその瞬間、湯気がふわりと立ちのぼり、鶏スープの香りが米の甘さをまとって鼻先に届く。

食事の合間に酒を楽しむタイプの店にとって、雑炊はまさに最高の主食だ。

濃厚で、柔らかく、温かく、胃にじんわりと落ち着く。

よく考えてみると、この一食はもしかしたらあまり「型通り」な京懐石とは言えないかもしれないが、全体を通して心地よく、面白く、そして見応えもあった

店主の伝統と現代の組み合わせ方がとても気に入った:京野菜と旬をキーワードに、どの一皿にも明確なコンセプトがあり、表現も的確で、中には誰も思いつかないような組み合わせもある。

さらに松尾大社の門前という土地柄もあって、主厨は幼い頃から清酒文化に育まれてきた。彼の料理スタイルは一般的な京料理よりも少し「重め」だが、それが彼の目指すペアリングにちょうど適している。清酒の選択肢は京都から全国へと広がり、マイナーな蔵元まで含まれていて、組み合わせ方にもより幅がある。

京料理という枠の中にしっかりと足場を置きながら、日本全国の清酒に向けて料理の懐の深さを示している。

女将のもてなしの技量も、この食事の見逃せないハイライトだった。よく話す方だが、決して出しゃばることなく、さりげなく客の細部まで気を配ってくれる。

穏やかで優雅、そして大らか。言葉の端々には確かな知識と絶妙な距離感がある。細やかな心配りの数々に、思わず京都の女性の「凄み」を実感させられた

「これから京都に行くたびに、また訪れる機会があればいいな」

京料理 鳥米

昼11:00~15:00(L.O.15:00) 

夜17:00~22:00(L.O.21:00)

https://www.toriyone.com

Lunch Menu  ¥1,1000 ++

Dinner Menu ¥1,6500++

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